「DoingよりもBeing」。予測不能な時代にどう生きるかをテーマに、文学部卒業生による玉川大学・玉川学園学友会寄附講座が開催されました。

2021.03.12

1月18日(月)、玉川大学・玉川学園学友会寄附講座として、「35CoCreation合同会社(https://35cocreation.com/)」の代表である桜庭理奈氏をお招きし、文学部英語教育学科の1、2年生を対象としたオンラインの講演会が開催されました。
文学部英語教育学科では留学を必修としていますが、2020年度は新型コロナウイルスの影響により、2年生の留学が中止となってしまいました。また1年生も入学してからオンラインでの授業が続き、今後の留学に関しても不透明な状況が続いています。このような予測不能な状況の中、自身のキャリア形成についてどのように考え、どのような準備を行うべきかを、桜庭さんに語っていただきました。

今回講師を担当する桜庭さんは、玉川大学の卒業生。文学部外国語学科英語コースの出身であり、英語教育学科の学生にとっては実質的に直接の先輩にあたります。玉川大学を卒業後、イギリスのエセックス大学大学院博士課程前期を修了。その後、複数の外資系企業を中心に活躍し、GEヘルスケア・ジャパン株式会社の人事部長および執行役員を経て、2020年5月に組織開発や人事コンサルティングなどを担う「35CoCreation合同会社」を立ち上げます。講演の冒頭で桜庭さんは学生たちに語りかけました。「今回の講演では志を持って事を行う人、つまり『志事人』として自分らしい生き方をともに考えた上で、皆さんはこれからどんな人生を送りますかという問いかけをしたいと思います。私はこれまでGEだけでなく、ロゼッタストーンやアリアンツなど、大手の外資系企業でキャリアを重ねてきました。そうした経歴を『輝かしいキャリア』と捉える人も少なくありません。けれどもこれまでの人生には、多くの紆余曲折がありました。今日はそんな私の弱みを吐露することで、皆さんそれぞれに何かを感じていただければと思います」。

続いて「VUCA」という聞き慣れないビジネス用語に学生たちは耳を傾けます。これは「Volatility(変動性)」、「Uncertainty(不確実性)」、「Complexity(複雑性)」、「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取った言葉で、現代の経営環境やキャリア形成に関する状況を語る際によく使われるそうです。「以前であれば、企業は5年、10年といったスパンで人材育成を行ってきました。けれども現在はVUCAによって1年先を予測することも容易ではありません。そこで求められるのが、今までとは異なるサバイバル力なのです」と、現在の人事状況を説明してくれました。

そして外資系企業の人材育成研修でも活用される「ライフライン・チャート」と呼ばれる人生の波を表現する図を使い、これまで歩んできた自身のキャリアを語ります。冒頭の話にあったように、第三者からはキラキラしたキャリアに見えるかもしれないものの、実際には順風満帆ではなかったという桜庭さん。就職後、「英語が堪能」ということで指名された初めての海外出張は、まったく知識のないマーケティングに関する会議で、当初は何も理解できないこともあったそうです。またリーマン・ショックの煽りを受けてリストラされたこと、その後人事担当として採用された会社では、今度はリストラを宣告する側に回ったことなど、決していつも順調というわけではなかった経験談に、学生たちは真剣に聞き入る様子でした。

これらの困難な状況の中でも、自分なりの選択をし、キャリアの歩みを止めなかった桜庭さん。最初はまったく理解できなかった初めての海外出張では、会議の内容をひたすらメモしたことが奏功し、最後の研修ではその内容を自国に帰ってから的確に教えることができるトレーナーとして、参加者100名の中の3名に選ばれました。またリストラをされた経験は「自分が日本の人事を変えていこう」と決意するきっかけとなり、そこから人事を中心としたキャリア形成の道を拓くことができました。桜庭さんが学生に提示した自身の「ライフライン・チャート」は、まさに山あり谷ありです。GEヘルスケア・ジャパンの人事部長となった頃から講演会の依頼が多くなったといいます。しかし講演後、各企業のトップからは、「素晴らしいお話だったけれど、我が社でそこまで人事に取り組むことは難しい」といった意見が多かったそう。「それならば、リソースとしての人事を多くの企業に提供できる会社を作ろう」と意を決します。そう考えて立ち上げたのが“35CoCreation合同会社”だったのです。

「35CoCreation合同会社」は、強くしなやかな組織をともに作っていくことを目的に、企業がさまざまな状況に置かれている中で伴走者となり、戦略策定や組織開発、人材開発といったサービスを提供しています。「働く人と組織の志がきちんとリンクされている状態で、ともに成長できる社会を作ることが当社のミッションです。そして日本から、『何だか人事に関して凄いことが起こっているぞ』と世界に感じてもらうくらい、人事の価値を変えていこうというビジョンを描いています」と力強い言葉が聞けました。


そして「では皆さんの生き方はどうですか?」と問いかけ、学生たちのアウトプットの時間に移ります。実際に一人ひとりにこれまでの「ライフライン・チャート」を書いてもらいました。「自分の人生の中での三つの山と三つの谷を描いてみてください。そして、自覚している自身の強みと今後の課題についても考えてみましょう」という提案に、思い思いに描き込んでいく学生たち。出来上がりを見て「たった20年だけど、意外と大きな波があることに気付いた」、「楽しかったことよりも、嫌なことのほうが強く印象に残っている」、「大きな波がない自分は、努力が足りないのかもしれない」など、改めて自身のこれまでの歩みを振り返ってみると、気づかされたり、反省したりと、さまざまな感想が聞かれました。
これは桜庭さんがリーダーシップ研修で受講生にやってもらうワークだそうです。そして「ここから私が皆さんに伝えたいのは、『DoingよりもBeingが大切』ということです」と、学生たちにメッセージを送りました。この言葉は、桜庭さんがこれまで生きてきた中で最も大切にしてきた言葉。「私たちは、何を行うか(Doing)にフォーカスをしがちですが、それよりも大切なことは、自分がどうありたいか(Being)を実現するため、今、何をすべきかなんです」。

講演の最後の質疑応答では、学生からの「私は感情の上下が激しいのですが、モチベーションを高く保ち続ける工夫はありますか?」という質問に対して「私も気分の上下が激しいほうですが、モチベーションが上がらない際は、その物事を面白くする要素を見つけるということを心がけています。たとえばデータ分析のようなロジカルな作業が苦手だったのですが、ある時『分析は、数字の裏にあるストーリーを読み解くこと』といった話を聞き、それからはこの作業が好きになりました」とアドバイスも聞けました。また「先ほど『DoingよりもBeingが大切』というお話がありましたが、自己のBeingを形成していく時に重要だと思うこと、またこれまで重視してきたことは何でしょうか?」という質問に対しては次のように答えてくださいました。「二つあると思います。一つは『やってみなはれ』という言葉ですけれども、興味のあることは全部やってみるということ。そうして視野を広げて、普段話をしたことのない人と話をしてみたり、バイトの職種を接客から事務へと替えてみたり。そうすると頭の中に、今までなかった新しい思考の筋肉ができてくるので、それを太くしていくんです。そして二つ目は、辛い時こそ自己内省をするということです。辛いと思うのは成長の兆しで、その機会にしっかりと自己内省をすることが大切だと思います」。学生からはこの他にも多くの質問が寄せられましたが、桜庭さんはどの質問にも真摯に向き合いながら、積み重ねてきたキャリアに裏打ちされた的確なアドバイスをくださいました。その言葉は、学生たちに伝わった様子です。

90分という時間がとても短く感じられた桜庭さんの講演。現在に至るまで桜庭さんのキャリアは決して平坦ではありませんでしたが、『自分がどうありたいか』を常に考え、やるべきことをやるということが重要であると感じました。何より学生にインパクトを与えたのは、卒業生である桜庭さんのスタートラインが自分たちと同じ玉川大学の、同じ文学部だったことなのではないでしょうか。現代はまさに予測不能な時代といえますが、講演で語られた、自分の意志で選択をし、壁にぶつかっても歩みを止めずに進むことが大切というメッセージは、学生たちの心に響いたことでしょう。

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