第二里行者の精神で、新たな分野を切り拓く人材に。大学院・芸術専攻科の入学式と大学院生の集いが開催されました

2021.05.20

2020年度は新型コロナウイルスの影響で行われなかった入園式や入学式ですが、本年度は予防措置を執り、K-12、大学とも開催することができました。4月7日(水)には、大学院・芸術専攻科の入学式と大学院生の集いが行われました。

University Concert Hall 2016のMARBLEで行われた入学式では、入学生紹介の後、小原芳明学長からの訓辞がありました。「この玉川の丘では、幼稚園児から大学生の約9,000名が学んでいます。皆さんには彼らの学修活動をリードする気概をもって、この丘での教育研究に臨んでくれることを願っています」と、小原学長はまず玉川学園の最上級生としての振る舞いについて触れました。その上で「高学歴化した社会で活動していくには、多くの量に加えて質の高い知識が必要です。しかし変化のスピードは速く、最先端の知識も来年には『並み』の知識となってしまいます。大学院には今ある知識をより深く理解した上に、新しい知識と技術を生産する楽しみがあります。温故知新とあるように、基礎となる知識を土台にして新たな知識を生み出す機会、それが大学院です。日本は輸出できるほどの地下資源に恵まれていません。我が国にとって人的資源がいかに重要であるのかを認識し、社会に貢献できる人間となることを学修目的としてください」と、これから自身の研究分野を深めていく大学院生・芸術専攻科の学生たちにメッセージを送りました。 その後、研究科長・芸術専攻科主任の紹介があり、校歌を静聴し、大学院・芸術専攻科の入学式は終了しました。

そして同じ会場で大学院生の集いが催され、東京大学先端科学技術研究センター所長の神崎亮平教授による研究講演が行われました。この大学院生の集いは例年行われている、大学院生と教員が一堂に会して交流を深める「玉川大学大学院研究科交流会」に相当するもので、昨今の状況を踏まえて本年度は神崎先生の講演会として開催されました。

神崎亮平先生は東京大学先端科学技術研究センター所長、東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻教授でご専門は神経行動学、生物システム情報学。昆虫の神経細胞を解析してそのメカニズムを探り、科学技術・工学技術の分野に展開するなど、さまざまな研究で知られています。今回は「自然と調和する世界を求めて:昆虫・ロボット・コンピュータで拓く新しい科学技術」というテーマで講演をしていただきました。

地球上には約180万種の生物が生息しており、その半数以上の約100万種が昆虫だといわれています。そのすべての昆虫が、自分が生息する環境に対応する能力を備えているのです。「たとえば養蚕などで身近なカイコガは、同種が発するボンビコールというフェロモンを正確に感知し、オスがメスを探し出すといった行動で知られています。カイコガに限らず、昆虫たちは1ミリにも満たない脳でこうした活動を行っているのです」と神崎先生。実際に神崎先生の研究室ではカイコガの匂いを検出する能力を活かした昆虫操縦型ロボットを開発し、世界に衝撃を与えました。一方で、松茸の匂いをかぎ分けるカイコも開発。神崎先生の研究は神経行動学の最先端をいく高度な内容ですが、お話は非常に分かりやすく、昆虫たちが進化の過程で獲得したさまざまな生物知能は環境にも優しいテクノロジーとして、私たちのものづくりに寄与できることが理解できました。

講演会の最後には、質疑応答の時間もありました。大学院生からは「カイコガの認識能力に、個体差はありますか?(工学研究科)」、「徘徊が問題となっている認知症のお年寄りや学習障害のある人に対して、カイコガのフェロモンをかぎ分ける能力を活用することはできるでしょうか?(教育学研究科)」、「コオロギは喧嘩をした相手を記憶しているといったお話がありましたが、喧嘩以外の行動も記憶しているのでしょうか?(農学研究科)」など、さまざまな質問がありました。何より同じ講演を聞きながらも、学生それぞれが自身の研究分野に紐づけて、異なる角度から質問を投げかけている点が印象的でした。

こうして本年度の入学式および大学院生の集いは終了しました。新入生たちは明日から研究活動に取り組みます。入学式の訓辞の中で、小原学長は玉川学園の12の教育信条の一つである「第二里行者」についても触れました。これはマタイ伝の一節である「人もし汝に一里の苦役を強いなば彼と共に二里行け」から取られており、最初の一里は命じられるままに歩いたとしても、次の一里は自分の意思で歩くことで、人生の開拓者になってほしいという意味が込められています。大学で学んできた知識を活かして独自の研究に取り組む彼らも、まさに人生の開拓者。研究活動を通して社会に貢献できる人間になることを期待しています。