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縄文時代の遺跡を、現代の技術で新たな場所へ移設する。教育学部の学生が取り組んだ、遺跡の移設労作。

2021.05.18

2021年の4月から5月にかけて、大学9号館脇にある敷石住居址の移設作業が、学生の労作として行われました。

<東京都町田市田端遺跡敷石住居址>

玉川学園が位置する東京都町田市は、全国でも有数の古代遺跡が多い地域として知られています。市内では1,000ヵ所以上の遺跡が確認されており、玉川学園のキャンパス内からも数カ所で縄文時代の住居址が発見されています。各地に遺跡が存在する町田市ですが、その多くは1960年代から急速に増加した宅地開発などによって発見されたもの。そのため保存が難しい事例も少なくありませんでした。貴重な遺跡を後世に伝えるために発掘調査を率先して行っていたのが、玉川学園の考古学研究会でした。研究会が発掘調査した遺跡で、調査終了後に学園構内に移設して保存し教育活動に活用してきたものがあります。それが松陰橋そばの大学9号館横にある、東京都町田市『田端遺跡』(以下田端遺跡)の敷石住居址です。

<移設地>

長い間この場に馴染んでいた住居址ですが、今回、大学9号館の解体にあたり、キャンパス内の別の場所へ移すことになりました。移設地はSTREAM Hall 2019とK-12経塚校舎に挟まれた小高い丘に決まり、1968年当時、大学通信教育部日本古文化研究会の学生が労作したように、教育学部の学生たちが教育博物館の菅野和郎教授や造園業者の皆さんなど多くの方の協力を得ながら、労作として移設に取り組みました。ここでは主に4月22日(木)に行われた敷石の移設作業についてご紹介します。

「田端遺跡」は、京王相模原線多摩境駅近くの町田市小山町で、1968年に発掘調査された遺跡です。近くからは東京都の史跡にも指定された「ストーンサークル」(田端環状積石遺構)の他、その後の数次にわたる調査で、約150軒の竪穴住居も発見されています。1968年の遺跡発掘調査の中心的役割を担ったのが、当時、玉川学園職員だった浅川利一氏が指導し、玉川の大学生・高等部生らで構成された考古学研究会でした。発見された遺構の中で玉川学園に移設されたものは、縄文時代後期初頭4,400~4,500年程前の敷石住居址です。残念ながら一部が調査区域外であったため全容は分かりませんでしたが、形態は円形の居室部分から入口部分が長く伸びる「柄鏡形敷石住居」と推定され、これは関東から中部地方で多く見られる当時の住居形態です。

これは床に平らな石が敷き詰められている点が特徴。当時の人々が近くを流れる境川から平らな面を持った河原石を選んで運び、住居に敷き詰めたのではないかと、菅野教授は推測します。
移設されるエリアは高台に位置し、縄文時代の人々が生活の知恵をもって好んで住居を建てた地形に似ているということと、Primary Divisionの児童が歴史の学習などで訪れやすいようにといった理由から、この場所が選ばれました。

今回の移設労作に携わるのは、教育学部理科ゼミ(石井恭子教授と市川直子准教授のゼミ)の3年生7名・4年生13名です。
学生たちは、まず教育博物館で「町田市田端遺跡」に関するレクチャーを受けた上で9号館横に保存されてきた敷石住居址の石材の取り外しを実施。実測図と照合しながら石のナンバリング作業や敷石レベル(高さ)の測定・記録などを行った上で、この日の移設労作に臨みました。

移設場所は、既に糸によってグリッドに仕切られており、どの場所にどの石を設置すればいいのかが分かるようになっています。設置されていた石は、表面は平らであっても取り出してみると想像以上に大きいものが多く、力のある学生でも持ち上げるのが困難なものもありました。また移設する石を順番にただ並べればいいのではなく、正確に移設するためにはそれぞれの石の高低差も復元しなければなりません。石の形状をよく観察しながら、建築現場などでよく見られるオートレベル(高さなどを測定する機器)を用いて、それぞれの石の高さを合わせていきます。学生たちは菅野教授や造園業者の方に手伝ってもらいながら作業を進めますが、一つのグリッド内に石を移設するだけで数十分かかる場合もありました。

<大学9号館脇での作業>

この日、敷石の移設作業はある程度進みましたが、5月に入り配置の調整作業や隙間を埋める作業、清掃などの仕上げを行い、完成を迎えました。

<移設作業>

実際に移設労作に参加した学生にも話を聞いてみました。

「昨年度はずっと自宅でオンライン授業を受けていましたが、もともと身体を動かすことが好きなので、この移設労作はとても前向きに臨むことができました。ただ敷石は僕の想像を遙かに超えた重量があり、驚かされました(石井ゼミ3年生・伊藤弾さん)」。

「そもそも遺跡に触れること自体、貴重な経験だと思うので、参加してよかったと思っています。道具類も初めて使うものばかりだし、高さも測って調整するなど知らなかったことも多く、とても勉強になりました(市川ゼミ3年生・廣澤青空さん)」。

古代遺跡の移設労作は、「縄文時代の人々と同じ作業を体験した」と言い換えることもできる貴重な経験です。石井・市川ゼミに所属する学生は小学校教員志望者が多く集まっていますが、遺跡移設を実践で学んだこの経験は、将来教壇に立った際にも大いに役立つはずです。また敷石住居址も新しい場所に移設されたことで、これまで以上に教育の題材として活用されることでしょう。

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