K-12の生徒たちが、秋山仁氏の四面体タイル定理を使いConsilience Hall 2020の壁面装飾のデザインに挑戦。3学部長に向けたプレゼンテーションにも取り組みました。

2021.07.27

今春完成したConsilience Hall 2020。そのエントランス近くの壁面をK-12の生徒たちが考えたデザインで飾ることになり、5月27日(木)に選考会が行われました。この選考会に参加するのは、Secondary Program Division(6-12年)の生徒たちです。彼らは今年1月18日(月)に行われたConsilience Hall 2020竣功記念式典に出席して、数学者・秋山仁氏(東京理科大学特任副学長)による記念講演を聞く機会を得ました。秋山氏が発見した「4つの正三角形からなる正四面体(三角錐)を切り開いて得られる展開図がどのような形であってもタイルのように敷き詰められる」という四面体タイル定理を使って壁面デザインを考案することになりました。採用された案は、学園内の大型陶板を制作している大塚オーミ陶業株式会社によって陶板になります。陶板のサイズは幅1.71メートル×高さ2.92メートルのサイズでConsilience Hall 2020の壁面を飾ることになります。

選考会で審査を担当するのは工学部長の相原威教授、農学部長の小原廣幸教授、芸術学部長の中島千絵教授、ファシリテーターは、K-12で美術教員も務めていた芸術学部の栗田絵莉子助教が担当しました。また大塚オーミ陶業株式会社の大杉社長をはじめ担当の方や、秋山氏、STEAM教育活動を行っている株式会社steAmの中島さち子さんと大山口菜都美さんもオンラインで参加しました。

工学部長 相原威 教授
農学部長 小原廣幸 教授
芸術学部 栗田絵莉子 助教
芸術学部長 中島千絵 教授

この日の選考会に参加した生徒は、7年生から12年生の計13名。新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、オンラインか対面を選択できるようにしていました。生徒たちは発表前日までArt Labの担当教員である瀬底正宣教諭の指導のもと、制作意図を考えながらデザイン作業を進め、自分のめざした形を発表ぎりぎりまで追求しました。思い思いのデザイン案とその制作意図のプレゼンテーションを、審査員の先生たちに向けて行いました。ここではそれぞれの生徒のプレゼンテーション内容を紹介します。

1. 「The wave」 7年・近藤慎之助さん

自身の好きな葛飾北斎の「富嶽三十六景」に描かれた波をモチーフに、新型コロナウイルス感染症の影響や、変わりゆく時代、流行を表現。同時にそういった流行にとらわれず、一人ひとりの個性を大事にしてほしいという想いも込めました。テーマカラーとして使用したのは、玉川学園のカラーでもある青色です。

2. 「明るい未来へ」 7年・渡邊愛瑠さん

新型コロナウイルス感染症の影響など、どんな困難にも打ち勝つという意味を込め、アマビエをイメージして制作。未来を想起させる空のような青、太陽のように自己を主張する黄色、愛情や人とのつながりを表現するピンク色を使い、未来へと向かう気持ちを表しました。

3. 「虹の波」 7年・山崎凛々子さん

虹の7色を使用し、各色に濃淡をつけることでグラデーションに着色。並べてみると全体が海の波のように見えたことから、「虹の波」という作品名にしました。

4. 「進化していく中で変わらないこと」 9年・筈谷弥那子さん

玉川学園が歴史の中で大切にしてきた自然を茶色で表現、またConsilience Hall 2020で新たな研究が始まることをキャンバスに例えて白色で表現すると同時に、この施設も学園に馴染んでいくということを緑色で表現しました。またタイルの太い部分を学校とし、そこからさまざまに飛び出している形状を学生の才能としてイメージしました。

5. 「自然」 9年・奥真美さん

現代はいろいろなことが便利になった一方で、何でも自分でできてしまうと勘違いする人も多い気がします。そこで鶏や波、大地などをモチーフにして、私たちは自然のおかげで生きているということを伝えたいと思い、このデザインを考えました。

6. 「玉川の丘」 9年・大谷英真さん

玉川学園の特徴でもある豊かな自然を、樹木をモチーフにして制作しました。また、緑色のトーンを少しずつ変えることで、多くの樹木に囲まれた玉川の丘を表現しました。

7. 「温故知新 ONKOCHISHIN」 9年・関岡優慈さん

自然とAIの様子を表現した案で、自然は緑色、AIは水色で表し、また現代を濃い色で、未来を薄い色で表しています。現代と未来の比較を明確にすることで、現代に生きる自分が思い描いた未来の様子を知ってもらいたいという想いが込められています。

8. 「“ESTEAM”」 11年・村上鼓太朗さん

黄色のギザギザで雷を意味し、この施設での学ぶ学生のアイデアを表現。ピンク色のハートには学生たちに人道的な行動をする人になってほしいという気持ちを込めました。そしてさまざまな色の星は多様でユニークであってほしい、多方面のスキルを伸ばしてほしいという意味をもっています。

9.「 Unification」 11年・森望瑛さん

Consilienceという単語が持つ「統合」という意味に着目し、光の三原色を使いました。また凹凸の多いデザインにすることで、「統合」から想起される「絡み合う」といったイメージを表現しました。

10. 「円と線」 12年・櫻井花蓮さん

玉川学園の校章をデザインモチーフに使用し、色も校章で使われている紺色と白色を取り入れました。正四面体を切り開いた形状を円と線で縁取り、中心部分に校章を入れることで、「点と線でつながる」ということを表現しました。

11. 「飛翔」 12年・五十嵐春仁さん

Consilience Hall 2020に合う色として、青色とピンク色を選択。同時にその色合いで、果敢な玉川っ子の活力を表現しています。自然や玉川学園をイメージして葉の形や円形をデザインに採用。組み合わせた際の鳥が飛び立つような、人が手をつないでいるようなデザインが特徴です。

12. 「切なるもの」 12年・田島千野花さん

「新型コロナウイルス感染症のことを忘れないように」という想いで制作。ノコギリの歯のような形状は心電図を、また蛇と杖を合わせることで医療のシンボルであったケーリュケイオンを表現しています。また中央の白い部分は、周囲の線と重なることでいろいろな巡り合わせを表現しています。

13. 「わかめ」 12年・島田真沙希さん

緩やかなカーブで玉川学園の豊かな自然を表現したいと考え、思いついたモチーフが「わかめ」でした。ただ緑色だけでは単調になるため、波の形と青色を加えました。コロナ禍での受験や勉強に悩むことが多いと思いますが、これを見たときに心が癒やされたらいいなと思い制作しました。

各自のプレゼンテーションは約5分間。生徒たちは、工学部長、農学部長、芸術学部長に対し、堂々と想いがこもったプレゼンテーションを披露していました。各自の発表には必ず審査員の専門的視点から質問、アドバイスが入り、科学や数学と芸術性を融合するまさにConsilienceを具現化したような審査会となりました。審査の先生からは「コンセプトがしっかりしている」「意図が明確に伝わってくる」などの感想を得られ、K-12・大学がワンキャンパスにある玉川だからこそできる教育連携が実現しました。
この日のプレゼンテーションを受けて、先生方は「プレゼン力(デザインのメッセージ性を感じるか)」、「建物と調和するデザインになっているか」といった観点で作品を審査。結果として「4. 進化していく中で変わらないこと(9年・筈谷弥那子さん)」、「6. 玉川の丘(9年・大谷英真さん)」、「7. 温故知新 ONKOCHISHIN(9年・関岡優慈さん)」の3案が採用されることになりました。また、学部長による学部長賞も急遽設定され、工学部長賞に「5. 自然(9年・奥真美さん)」、芸術学部長賞に「2. 明るい未来へ(7年・渡邊愛瑠さん)」、農学部長賞に「11. 飛翔(12年・五十嵐春仁さん)」がそれぞれ選ばれました。壁面装飾は採用された3作品は瀬底先生と中島先生に調整をお願いしつつ、大塚オーミ陶業によって一枚の陶板となり、10月に取り付けが完了する予定です。

審査の様子

数学、ART、工学等が融合されて創り出されるこの陶板はConsilience Hall 2020のエントランスに近い場所に取り付けられ、「Consilience=融合」のコンセプトに相応しく、まさに建物のシンボル的な存在になることでしょう。生徒たちは今回のプレゼンテーションを通して、デザインが持つ力、意味、表現方法など単にデザインするだけでなく、その裏にある自分の考えや意図の大切さを学ぶことができたのではないでしょうか。