自分で問題を見つけ、解決法を探る。数学研究者の中島さち子氏をお招きし、数学の面白さを体験するワークショップが開催されました。

2021.07.09

2008年から文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定されている玉川学園。授業を通して、自分で課題を設定し実験を組み立てて研究するといった「実験デザイン」ができる生徒の育成をめざしています。また授業以外でも自由研究での活動や独自のプログラムなどを取り入れています。6月18日(金)には株式会社steAm代表取締役の中島さち子氏をお招きし、ワークショップを開催。9-11年生の生徒有志が参加しました。

株式会社steAmでは、玉川学園が提唱するESTEAM教育の基盤ともなっているSTEAMを通して、一人ひとりの隠れた創造性を解き放ちプレイフルな参加型社会の構築をめざすための、さまざまな活動を行っています。今回のように学校を訪れて数学に関するワークショップを開催するのも、その活動の一つ。中島さんは数学研究者で、この日の生徒と同年代だった高校時代には、国際数学オリンピック大会に参加。日本人女性として初めて金メダルを獲得しています。一方でジャズピアニストとしても活躍しており、生徒たちに「この中に楽器を演奏している人はいますか?」と質問する場面もありました。この日は中島さんだけでなく、先日のConsilience Hall 2020竣工式でも記念講演会を行った秋山仁氏など、株式会社steAmで活動しているメンバーの皆さんも参加し、約2時間のワークショップが行われ、小原芳明学園長も見学に訪れました。

「皆さんこんにちは!」と、中島さんの元気な声が教室に響きます。この日のワークショップは、細長い紙の両端を貼り合わせて輪を作り、その中央を切ることからスタート。二つの輪に分かれることは誰でもイメージできますが、その次は紙に一回ひねりを加え、いわゆる「メビウスの帯」の状態にしてから中央を切っていくとどうなるのかを考えてみます。「早く結果を知りたくて実際に切ってしまいたくなると思いますが、まずは頭の中で考えてみてください」と中島さん。間違ってもいいから、まずは予想することが数学においては重要だと、生徒たちに語りかけます。生徒が秋山さんに質問したり、生徒同士で意見を言い合う様子も見られました。

この後も課題はさらに高度な内容になっていきます。次に用意されたのは先ほどの細長い紙を十字にクロスさせたもので、同様に中央を切っていくとどうなるのかを考えます。構造が複雑になったことで、生徒の間でも議論が盛り上がります。秋山さんもすぐに答えを教えることはせず、「切れ目が交差することで生まれる、四つの角に着目するといいかもしれないね」と、生徒にヒントのみを与えます。他にも中島さん自身が研究に取り組んでいる結び目理論を使った課題などに挑戦。これらの課題に取り組む過程で自分の意見をまとめたり、図に描いて説明することを通して、生徒たちは考えの言語化や可視化といったことを体験できました。また十字にクロスした紙の展開においては、貼り合わせる際の向きやひねりの有無によって切った結果がどう変化するかなども考えていきました。

2時間のワークショップはあっという間に終了。中島さんが1回目のワークショップに参加した生徒の意識が数日間でどのように変容するのかを知りたいということから、2回目が6月22日(火)に設定されています。この日のワークショップに参加した生徒からは、「誰でも分かりそうな題材から最先端の理論まで、改めて数学を面白いと思った」、「自分で予想を立て結果を出すことの楽しさ、面白さを見いだせた。数学には未だに分かっていないことが多く、自分にも定理発見の可能性があることが分かった」、「改めて自分は数学が好きなんだということを実感し、今まで以上に数学を好きになった」といった感想が聞かれました。

SSH主任の矢崎貴紀教諭は、「予想以上に生徒たちの反応が良かったと思います。難しい内容もあったし作業も多かったので疲れてしまうかと思いましたが、最後まで中島さんや秋山さんに質問をしていたし、何より楽しんで取り組んでくれたようです」と、この日の生徒の様子について語ってくれました。「普段の授業において、生徒たちはどうしても答えを早く知りたがる傾向にあります。そうすると、自ら課題を見つけて解決しようという姿勢はなかなか身につきません。今日のワークショップでは自分で問題を作成して『何故こうなるのだろう?』と考える機会が多かったので、次の回ではその部分がさらに深まるといいと思っています」。

K-12のSecondary Divisionでは授業以外の自由研究などでも生徒たちが数学を含めた理系の研究に取り組んでいます。そこで大切になるのは、自ら課題を見つけ、その解決法を探る姿勢。今回のワークショップは生徒たちがそうした姿勢を身につける、またとない機会になりました。