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TAP(Tamagawa Adventure Program)設立20周年記念シンポジウム『全人教育とアドベンチャープログラム-TAPの歩みと未来に向けて-』2021年12月11日開催

2022.01.17

2021年12月11日、TAP設立20周年記念シンポジウム『全人教育とアドベンチャープログラム-TAPの歩みと未来に向けて-』(玉川大学TAPセンター主催)が本学大学教育棟 2014にて開催されました。本来は前年の2020年度に開催する予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の余波を受けて中止となり、2021年度に改めて開催することになりました。

当日は人数制限や体温測定、換気、アルコール消毒など、万全の感染対策を取った上で100名の定員が入場し、オンライン参加もできるハイブリッド型シンポジウム(参加費無料・事前申込制)として実施。13時開場から16時30分の閉会まで、TAPを通したアドベンチャー教育20年の歩みを総括し、未来への展望を具体的に感じさせる充実したシンポジウムとなりました。

当日、受付が置かれた512教室にはTAPインターン学生による活動報告の展示発表も行われ、訪れた学校教員や教育関係者が興味深く見学する姿も見られました。

開会の挨拶としてまず小原芳明玉川大学学長が壇上に上ります。小原学長は来場者への感謝の言葉と共に、20周年を迎えたTAPへの取り組みが、玉川教育の根幹を成す12の教育信条の一つである「第二里行者と人生の開拓者」、すなわち独立独行の開拓者的実践力を持つ人材の養成に通底することを述べました。

基調講演 工藤亘玉川大学TAPセンター長(13:20~)

基調講演の壇上に立ったのは、21年前に小原学長からTAPを託された工藤亘玉川大学TAPセンター長です。まず手拍子、指鳴らし、足拍子を実演し、TAPにおける重要なファクターである、教育現場のノンバーバル(非言語)コミュニケーションの重要性から語り始めました。

最初のテーマは「TAPの歩み」。2000年、全人教育研究所内に「心の教育実践研究施設」を創設し、実践施設であるROPES(ロープス)コースを建設したのは「まさに小原学長の“冒険”だった」と工藤センター長は振り返ります。「強い心を持った子供を育てたい」という小原学長の思いを受けて、玉川学園で米国発祥のプロジェクト・アドベンチャーの手法を取り入れた体験型心の教育プログラムの実践を託された工藤センター長は当時30歳でした。当初は机6つと電話機のみ、現在も共にTAPセンターで活動する白山明秀氏と筆記用具を買うところからスタートしたそうです。

2000年に指導者研修を受けた小学部・中学部・高等部の教員と共に生徒への指導を開始。当時はアルファベット小文字で「tap(tamagawa adventure program」と称していました。2年後には、米国Project Adventure Inc.創設30周年記念セレモニーで、玉川学園が「プロジェクト・アドベンチャー優秀プログラム」を受賞し、その活動は世界でも認められます。2003年に学術研究所の「心の教育実践センター」として実践と研究の両輪で活動する組織としての充実が図られました。以来、K-12 や大学・大学院、さらに学外での実践例を積み重ねていき、2015年には「玉川大学TAPセンター」として独立したセンターに組織改編されました。

「今、TAPセンターはようやく〝成人〟としてアイデンティティを確立できた」と語る工藤センター長は、続けてセンター設立後の「研究活動」の動向、TAPの活動を通して見えてきた「求められる教師像」について言及。学び続ける姿勢を持ち、子供の能力を引き出すためのファシリテーション能力を備えた教師のあり方、そして玉川学園で実施している授業や資格制度(「TAPリーダー」「学級ファシリテーター」など)について解説しました。

さらに2021年に文部科学省・中教審答申「令和の日本型学校教育の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~」が発出され、まさに「成功するかどうか不確かなことにあえて挑戦する」「自ら踏み出すことによって新たなる自分を創生する」といったTAPが目指す体験型教育の意義が令和という時代の中でクローズアップされていることをアピールします。「令和の日本型学校教育」を構築していくために、対話的、協働的な学びを現場で実践できるファシリテーション能力を備えた「教員養成」の重要性がますます高まっていることを指摘しました。

「TAPは全員に即効性がある劇薬ではない。いわばジワジワと効いてくる漢方薬。それゆえに、TAPを教育現場での一時的なイベントで終わらせることなく、子供たちをはじめ対象者の日常生活の中にどのようにつなげていくかが、これからの課題」と提言し、「TAPの未来」については、「TAPを通した教育の体系化を進めながら、学校以外にもより広く一般化し、TAPならではの体験型教育を提供していきたい」と抱負を語りました。

ビデオメッセージ (14:45~)

TAP創設時から多大な支援を受けている米国Project Adventure Inc.で代表を務めていたディック・プラウティ氏のビデオメッセージが会場で上映されました。プラウティ氏は玉川のTAPの取り組みが「エキサイティング」であるとの印象を語り、パンデミックにより体験型学習の意義が高まっていることに触れながら、これからのTAPの展開について熱い激励と期待のメッセージを寄せていただきました。

パネルディスカッション「学校教育の未来とTAPの可能性」(15:00~)

TAPセンターの川本和孝准教授がモデレーターを務めたパネルディスカッションは、工藤TAPセンター長のほか次の3名の先生方に加わっていただき、それぞれが感じている教育現場や教員養成の問題点とTAPへの期待について語っていただきました。

若月芳浩氏(玉川大学大学院教育学研究科長)

玉川大学・大学院で教員志望の学生を指導する若月教授は、現在に至るまで長年にわたり幼稚園教育の現場で発達障害児などを受け入れるインクルーシブ教育に取り組んできました。その一環としてTAPという新しい方法論を現場に導入された際のご苦労と導入後の顕著な成果について解説しながら、今後のTAPの可能性と課題について指摘しました。

橋谷由紀氏(日本体育大学児童スポーツ教育学部教授)

川崎市で小学校教員と教育行政の経験を有する橋谷教授は、かつてTAPを川崎市の新規採用教員研修などに導入した経緯とその成果について解説しました。さらに児童・生徒1人に1台のコンピューターと高速ネットワークを整備するGIGAスクール構想の中で、今後、人間関係形成のためのエクササイズとしてのTAPが果たす役割に対する期待を語りました。

小原一仁氏(玉川大学教育学部長)

アフターコロナ時代における「体験活動の教育的意義」について、国の教育行政の方向性を踏まえた上で、全国における体験学習の実践例を紹介。一方で体験学習の導入には「理論的裏付けと史的視座も必要不可欠」と指摘。古代ギリシア、そしてルネサンスを経た「調和的人間への希求」とクルト・ハーンのアウトワード・バウンドや小原國芳の全人教育の考え方と絡めて近現代の体験型教育の関連について解説しました。

今回のシンポジウムでは、自分自身の体験を通して心の豊かさや人間関係、リーダーシップを育成するTAPを通した教育20年の歩みを振り返りました。その一方でICT教育は確実に進展します。流行と不易を考えながら、改めて教育現場における直接体験の必要性について検証することができました。TAPセンターでは、TAPの真価をさらに広く社会に拡げていくべく、すでに「次の20年」に向けて歩み始めています。

シンポジウム記録動画

開会挨拶:小原 芳明 氏(玉川大学学長)
基調講演:工藤 亘 氏(玉川大学TAPセンター長)
ビデオメッセージ:
ディック・プラウティ 氏(PA, Inc.元代表)
パネリストからの提言
橋谷 由紀 氏(日本体育大学児童スポーツ教育学部)
パネリストからの提言
若月 芳浩 氏(玉川大学大学院教育学研究科長)
パネリストからの提言
小原 一仁 氏(玉川大学教育学部長)
ディスカッション

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