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これまでのICT教育の実績を集約し発展させる、新たな拠点となるために。ICT教育研究センターの開設記念シンポジウムが開催されました。

2023.03.01

ICT教育に関する最先端研究の推進に加え、ICTが児童、生徒、学生に与える影響や対策についても考えていくため、2022年4月、学術研究所にICT教育研究センターが開設されました。これを記念して12月10日(土)には開設記念フォーラムを開催。「教育ICTプラットホームキャンパスの展開 ―次の時代に向けた新しいマナビをデザインするー」と題されオンライン形式で開催されたこのフォーラムには、教育関係者を中心に約100名が参加しました。

フォーラムの冒頭で、学術研究所の小野正人所長は「今年は明治5年に学制発布が成されて150年の節目の年になります。教育が社会に果たす役割は大きく、日本の発展にも寄与してまいりました。近年ではICTを積極的に活用することで、一人ひとりに適した学びの環境を整える取り組みも行われるようになっています。今回のフォーラムでは当該分野のリーダーであられる東北大学大学院、東京学芸大学大学院の堀田龍也教授に基調講演をいただけることにもなっております。今後の日本の教育DXを、皆の協働でより良いものに育てていく端緒になることを祈念します」と開会のあいさつを行いました。

小野所長の挨拶に続き、ICT教育研究センター主任の倉見昇一教授の進行により、玉川大学・玉川学園のICT環境についての説明が行われました。
最初に登壇したのは玉川学園前理事の石塚清章客員研究員です。「玉川学園には伝統的に、先進的な教育システムに挑戦しようという風土があります。小原國芳が取り上げたドイツの教育学者ジステルエッヒの言葉に『進みつつある教師のみ 人を教える権利あり』とありますが、近年は文部科学省でも『学び続ける教師』という表現を用いています」と石塚客員研究員。1970年代から高等部で情報通信に関する授業を行ったり、中学部で録音再生機「シンクロファックス」を導入するなど、玉川学園では早い時期からICTを教育に取り入れてきました。1990年代になるとK-12の教員がアメリカのICT先進校の視察を開始。1995年に、全学(k-12・大学)でのMMRI(マルチメディア・リソース・インスティテュート)構想を発表。1998年には「Global Tamagawa 10 year Challenge」計画を策定し、any time, any placeの教育を実現させました。「このように学園としての大きな方向性の下で、K-12から大学の各部署が独自にICT教育に取り組んできたわけですが、今回のICT教育研究センター開設に伴い、こうした研究・実践を集約していこうと考えています」と、石塚客員研究員は説明を行いました。
このようにICTに関する土壌が出来上がっていたこともあり、昨今のコロナ禍でも慌てることなくオンライン授業へと移行できた玉川大学・玉川学園。このことについて、大学の立場から教育学部教育学科通信教育課程の田畑忍教授が説明しました。「通学課程の場合、新型コロナウイルス感染症の濃厚接触者となり対面授業に参加できない学生に対しては、オンラインで受講するハイフレックス授業を導入しました」と田畑先生。ただ、オンラインで受講する学生からの質問などに対して、教員のみでは対応できない場合も出てきます。そのような場合は関係部署が対応し、授業の支援や授業の動画編集などを実施することで、授業が円滑に進むことを目指しました。また玉川大学の通信教育課程は、日本初の小学校免許状を取得できる通信教育として1950年にスタート。さまざまな授業形態の中から、印刷物、面接、メディア利用の三つの形態で授業を進めています。通信教育課程ではICTを効果的に活用し、すべての学生の「学びたい」を支援するために、メディア授業と面接授業を融合したブレンディッドスクーリングも実施しています。

続いてK-12の国際バカロレア(IB)クラスで指導を担当している矢田純子教諭が登壇し、IBにおけるICT教育について説明を行いました。IBでは、基本的に生徒が一人一台のPCを持ち、授業で活用しています。生徒からも「PCが一台あれば、授業も自宅での勉強もできるのがいい」といった意見や「グループワークでも、各自の進捗状況を把握しやすい」といった意見が聞かれました。「一方で、使用に関する綿密な条件提示の必要性や、依存しすぎることへの弊害などについても、今後は検討していく必要があります」と矢田教諭からの報告がありました。

そして最後に教育学部の山田徹志講師と工学部の田中昴文講師が登壇。ICT教育研究センターが目指すものについて説明を行いました。まず、この時期にICT教育研究センターが開設される意義について山田講師からは「ワンキャンパスで多様なコラボレーションを行い、イノベーションを実現する。この一元完結的なプラットフォームが競争優位性として挙げられると思います」と説明。既に文部科学省の委託を受け、行動センシングシステムを用いた教員の授業遂行技能の改善に関する研究にも取り組んでいます。その上でICT教育研究センターが目指すものとして、田中講師は「ここは最新技術を使い、これまで実現できなかった教育活動を進めていくための拠点になると思います。教員と学生のパートナーとしての役割を担っていきたいですね」と語りました。

玉川大学・玉川学園におけるICT教育についての説明が行われた後、堀田龍也教授による基調講演「これから求められる学校教育のためのICT活用のイメージ」が行われました。
東北大学大学院、東京学芸大学大学院で教鞭をとられている堀田教授。以前には玉川大学教職大学院や学術研究所にも所属されていました。また中央教育審議会の各種委員や、文部科学省「情報活用能力調査に関する協力者会議」、「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」等の主査や座長なども務められており、ICT教育分野の第一人者です。

冒頭で「ICT活用が最初に来るのではなく、これからの教育のためにICTを利活用する。これが重要だと思います」と堀田教授。世界でも類を見ない速度で人口減少が進んでいる日本において、企業はICTを活用することで業務を円滑に進めるため、デジタルスキルのある人材を積極的に採用しています。「それに対して、教育の分野ではICT導入がなかなか進んでいません。教師になる人が減っているのと同時に、今後は学ぶ内容以上に学ぶ方法を学ぶことが重要という観点からも、ICT教育は不可欠です」。 これからの大学教育では文系・理系を問わず数理・データサイエンスを学ぶことになり、2025年の大学入学共通テストでは「情報」という教科が試験科目に追加されます。だからこそ、小中高の段階で情報について学ぶことが求められている、とのことでした。
「令和の教育法として、一人ひとりの特性や学習進度に合わせた『個別最適な学び』と、他者と協力しながら取り組む『協働的な学び』を一体的に充実させていくことが重要になります」と語り、講演は終了しました。

閉会にあたり、倉見ICT教育研究センター主任から「ICT教育研究センターは玉川大学学術研究所の一組織として発足したばかりですが、来年度には早くも高等教育付置機関の1つとして独立することになっています。これからも固定概念にとらわれず、自由な発想で取り組んでいきたいと思います。」と挨拶がありました。 これまでも、幼稚部から大学院までが「より良い学びの環境」を整えるためICT教育に取り組んできた玉川大学・玉川学園。その精神を受け継ぐかたちでスタートしたICT教育研究センターが、ICT教育に関する最先端研究の推進・発信などを行い、新しい教育の在り方を提案していくことになります。今後のICT教育研究センターの取り組みにご注目ください。

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