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玉川学園の街で魅力的な絵画作品を生み出した夫婦・姉妹の足跡をたどる。教育博物館企画展「鈴木満と青木純子・青木美知枝 三人展 -玉川学園7丁目のアトリエで制作活動を続けた作家たち-」開催

2023.11.21

2023年10月23日(月)から12月17日(日)まで、玉川大学教育博物館・第2展示室で開催されている「鈴木満と青木純子・青木美知枝 三人展 -玉川学園7丁目のアトリエで制作活動を続けた作家たち-」(入館無料)。この企画展を準備してきた教育博物館学芸員の柿﨑博孝客員教授、同 萩原哉准教授、同 栗林あかね講師に話を聞きました。

柿﨑 博孝 客員教授
萩原 哉 准教授
栗林 あかね 講師

この企画展は玉川学園小学部の卒業生で、ヤマハ米国法人代表取締役社長などを務められた鈴木達也氏から、叔父にあたる昭和期の画家・鈴木満と夫人の青木純子、その妹である青木美知枝の洋画作品を多数ご寄贈いただいたことに始まります。
鈴木満夫妻は1948年に結婚後、玉川学園駅南口から歩いてすぐの玉川学園7丁目に自宅兼アトリエを構えました。そこから彼らの代表作が生まれましたが、一方で玉川大学出版部の教育書籍などに挿絵を提供していました。実は鈴木満の兄である鈴木清が興亜工業大学(現在の千葉工業大学・玉川学園が設立)の教授を、戦後、玉川大学の教授も務めた関係から、当時学内にあった教員住居で暮らしていました。満も同じ住まいで暮らしていたのですが、それは、創立者小原國芳が満の画家としての才に着目したことに起因すると思われます。玉川学園と満の関係は62才で亡くなるまで続き、玉川大学出版部が刊行した本の挿絵なども手掛け、その間に小原國芳夫妻の肖像画も描いています。
満の没後、夫人の青木純子はやはり画家であった妹の美知枝を玉川学園7丁目の家に呼び寄せ、姉妹でそれぞれの画業に打ち込む傍ら、自宅で絵画教室を開き、玉川学園の職員たちも生徒として通っていました。

今回の企画展は「第1章 鈴木満」「第2章 青木純子」「第3章 青木美知枝」そして「第4章 玉川学園と鈴木満」の4部構成です。夫婦、姉妹と言えどもそれぞれ独立した絵画表現を展開した芸術家。三人三様の作風を鑑賞できるとともに、それぞれの生涯の中での作風の変遷も楽しめる展示となっています。

「第1章 鈴木満」の見どころの一つは、戦時中に描き、戦後は米国に持ち去られ「模作」しか残っていない「学徒出陣」を、1970年代前半に自ら書き直した作品(未完)でしょう。そして1968年に妻と義妹とともに欧州旅行をした経験によって新たな表現様式を確立したプロセスも注目していただきたいポイント。欧州体験から生まれた月夜を背景に聖母マリアと幼子のイエスを思わせる母子像を描いた一連の作品は彼の代表作として高い評価を得ています。寒々とした印象を受ける画風ですが、ご家族によるとこれらの一連の作品を描いていた時期の満は、芸術家としてとてもいきいきとして上機嫌だったそうです。

「第2章 青木純子」は、窓辺をモチーフにした静物画などで独自の表現を追求していた60年代から、70年代以降に夫の死や自身の大病を経て、人形をモチーフにした絵画表現へと大きく変化したプロセスを確かめることができます。年を追うごとに人形と人間の境界をとことん追求していくような精緻さを極めた表現手法に、純子の生命への思いが凝縮されているようです。会場には絵画制作の参考にした純子の人形コレクションも展示されており、創作過程を想像する楽しみもあります。

学生時代に描いた「自画像」から始まるのが「第3章 青木美知枝」です。声楽家を目指していた美知枝は、病弱だったためにその夢を断念し、姉と同じ洋画の道を選択します。彼女が絵画表現のモチーフとしたのは生涯を通して「静物」でした。ただし、その表現手法は時代によってかなりの変化が見られます。玉川学園7丁目に住むようになった80年代後半からは深い緑色の色調と写実的な表現が特色で、自分なりの静物画を極めようとする画家としての真摯な思いを感じ取ることができます。

「第4章 玉川学園と鈴木満」には、出版部発行の「玉川児童百科事典」「こども百科」のために書いた挿絵のほか、玉川学園校舎に飾られたフレーベルの肖像画、小原國芳夫妻の肖像画など多くの作品を残しています。小原國芳夫妻の肖像画のうち妻・信の絵は小原記念館に飾られていました。一方で國芳の肖像画の習作は8点寄贈いただいたのですが、完成品が1点、南さつま市久志地区公民館にて飾られていたことを、8月に行われた南さつま市との包括連携10周年記念行事で現地に行った学芸員が発見。今回その作品も急遽お借りして夫婦そろった形での展示が実現しました。

また玉川学園北口に住み、満と交友があった作家・遠藤周作の新聞連載小説のために描いた挿絵も展示されています。満はこの連載が終わった翌年に亡くなっています。生前の遠藤周作は『鈴木満作品集』に寄稿し、「先生は毎日毎日、私の小説につきあってくださった。挿絵は私の考え通り、この小説の本質を活かしてくれるものだった」と感謝の弁を述べています。

開催期間中の11月23日(木・祝)と12月9日(土)それぞれ14:00~15:00には、教育博物館学芸員が見どころや作品の背景などを解説するギャラリートークも行っています。また、企画展の図録(1,500円)は教育博物館内のほか、玉川学園駅北口前の「Campus Store Tamagawa」や購買部の通信販売でもご購入いただけます。

企画展、ギャラリートーク共に無料・申し込み不要です。これからの季節、玉川の丘の紅葉鑑賞とともに、ゆかりのある画家たちの珠玉の作品コレクションをぜひお楽しみください。

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