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NHK「おはよう日本」で放映:絵本作家キノタ・ブレイスウェイト氏による大谷ゼミでの特別授業「すべての子どもは美しい」

2024.01.12

10月12日(木)、教育学部の大谷千恵教授のゼミナールでは絵本作家であり教育者としても活動を行っているキノタ・ブレイスウェイト(Kinota Braithwaite)氏をゲストスピーカーとしてお招きし、特別授業をしました。ゼミナールのテーマを多文化共生としている大谷先生。学生の指導のみならず学外の小中学校教諭を対象に、学校における多文化共生に関する講習を行うなど、積極的に活動しています。この日お招きしたブレイスウェイト氏もお子さんのいじめをきっかけに絵本作家となり、いじめや人種差別をなくすべく活動を続けています。大谷先生とブレイスウェイト氏は、7月に開催されたアメリカ国務省人物交流プログラムの同窓生コミュニティJAC-US(Japan Alumni Community of U.S. Exchange Programs)主催のイベントで、ブレイスウェイト氏が基調講演を行ったことをきっかけに知り合い、今回の特別授業が実現しました。
この日の授業の様子はNHKからも取材を受け、11月1日(水)の「おはよう日本」の中でも紹介されました。さらに12月1日(金)海外向けに日本のニュースを届けているNHKワールドの番組Newslineでも放映されました。

普段の授業とは異なりテレビカメラが入ったことで、少し緊張気味の学生たち。そんな彼らの様子を察してか、ブレイスウェイト氏は「リラックスして参加してほしい」と学生たちに伝えます。 奥様が日本人ということもあり日本語も話すことができるブレイスウェイト氏ですが、この日の特別授業は英語で行われました。
カナダ出身のブレイスウェイト氏は、先祖がアメリカの奴隷制度から逃れるためにカナダに来たとのこと。「私の先祖はカナダに入植し、カナダの歴史と社会に貢献してきました。そのことに誇りを持っています」とブレイスウェイト氏。しかしカナダでも、ブレイスウェイト氏の先祖は人種差別に悩まされます。祖父母や両親だけでなく、実際にブレイスウェイト氏も幼いころから差別を受けたそうです。
こうした経験から、自身の子どもたちが日本の学校に通うと決まったときに、少し抵抗感を感じたというブレイスウェイト氏。「日本の学校は教育体系がしっかりしている一方で、しばしばいじめが問題になると聞いていたからです」。

小学校での最初の数年間は何事もなく、楽しく過ごしていたそうですが、ある日、肌の色が違うことでからかわれた娘さんが、「もう学校に行きたくない」と言い出したそうです。
「学校に自ら乗り込むことも考えましたが、校長先生や担任の先生と相談し、娘のクラスでプレゼンテーションを行いました」とブレイスウェイト氏。子どもたちの前で、「肌の色に関係なく、すべての子どもは美しい」というメッセージを伝えました。そしてこの内容をまとめたのが、ブレイスウェイト氏による絵本、「Mio The Beautiful」です。
「このゼミナールの皆さんは将来教育に携わる人が多いと思いますが、皆さんが行動を起こし、子どもたちのためにより良い世界を作るため、人種差別やいじめを止めるために協力しなければならないという重要なメッセージを広めるきっかけになればと願っています」という言葉で、ブレイスウェイト氏の講演は終了しました。

この後、教育学部で将来教師になることを希望している学生が多いことを知り、ブレイスウェイト氏特製の授業で活用できるワークシートを配布してくださいました。さらに学生との質疑応答の時間が設けられ、さまざまな質問がブレイスウェイト氏に寄せられました。 日本語を母語としない子どもに対しての支援の方法について質問があった際は、バディシステムとして責任感のある優しい子を1・2人つけてサポートする体制を提案。子供どおしの意思疎通の中から、自然に学べることを示唆しました。
子ども達が対立している場面での教師の関わり方についての質問にも丁寧に答えてくださいました。小学校は中高に比べ教員の影響力があります。そしてすぐにやめさせなくてはならないこともあります。子供たちにわかるように説明する必要はあるけれども、そのときは先に対応すべきだとアドバイスしました。
また、子供たちの相互理解を促す指導方法としてロールプレイなどがいいのでは?という学生からの意見についても、役を演じることで、その行為や発言を客観的に見ることができる点が良いと勧め、さらに、多様な文化の本や音楽を取り入れるなど、クラスでの環境づくりの大切さについてもお話しされました。
幼稚園教諭を目指している学生は、遊びを通して異文化理解を促したいと考えていることを発言すると、ブレイスウェイト氏はまさに体験を通して学ぶことが大切であると学生の意見に賛同してくださいました。

これまで学校教育の現場では、日本で生まれ育ったという「同じ環境で成長した」児童や生徒を中心に、教育が行われてきました。けれども現在は、どのクラスにも海外にルーツやルートを持つ子供たちがおり、違いを取り上げていじめや差別が生まれることも少なくありません。これから教壇に立つ学生たちには、多文化共生を実現するんだという心構えが求められており、何より自分自身が児童や生徒の肌の色に関係なく、彼らの本質と向きあうという意識が必要です。この日のブレイスウェイト氏の講演は、多様性に富んだ現場で起きうるいじめや差別について改めて考える、とてもいい機会となりました。

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