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「スターレックドーム」を活用した芸術学部生のドーム映像上映会「Fulldome Night Vol.04」

2024.02.14

玉川学園サイテックセンター内にある「スターレックドーム」は、直径約12メートルのドームに階調性豊かで高精細な8K解像度映像の投映機を備えた教育機関としては国内最大級の規模を持つプラネタリウム施設です。
2018年度より玉川大学芸術学部では学生による「ドーム映像」発表の場としてこの「スターレックドーム」を使った上映会「Fulldome Night」をスタートさせました。
「ドーム映像」とはテレビや映画のような平面映像ではなく、観客が広い視野で見回すことができる映像で、プラネタリウムのようなドーム(半球)スクリーンの映像を「フルドーム(Fulldome)」と呼んでいます。アート・デザイン学科では、ドーム映像作家として国内外で活躍する飯田将茂講師から直接「フルドーム」表現の魅力と特性、作り方のノウハウについて教わる授業を開講。受講する学生たちは、最終的に実際にドーム映像作品づくりに取り組んでいます。
2020年度から2年間はコロナ禍によって中断を余儀なくされた「Fulldome Night」でしたが、昨年度はバウハウス・ワイマール大学(ドイツ)とリモートで結んだコラボ企画などパワーアップしたカタチで3年ぶりに「Fulldome Night Vol.03」として復活しました。
そして2023年度はアート・デザイン学科授業「空間表現Ⅱ」の授業成果発表会として、2024年1月19日(金)18時よりに「Fulldome Night Vol.04」を開催しました。今回は学外からのゲストとしてこれまで200作以上のドーム映像を制作してきたドーム映像のスペシャリスト金子益巳氏(有限会社AND You代表)をお迎えして、学生による16作品を上映しました。

上映に先立ちアート・デザイン学科主任の椿敏幸教授は昨年度この授業で作品を発表した学生2名が学外の映像コンペティションで優秀な成績を修めたことに触れ、「国内外でも珍しいドーム映像の授業の成果発表の場に、学外からも多くのご来場があったことをうれしく思います。そして私自身がなによりこの上映会を楽しみにしています」と挨拶しました。

上映は途中休憩を挟んで、8作品ずつの2部構成で行われました。各作品の概要を紹介します(上映順)。

上映作品

第一部

①塚本夏帆「クロスロード」

2次元と3次元の交わりを表現した作品。作者は未来、ポジティブさを感じさせる映像づくりを心がけたそう。

②谷合春飛「Night View」

街の夜景を表現した作品。次第に窓の明かりが増えていく過程を、手描き風の温かみを感じさせるタッチで表現した。

③杉山沙蘭「雨音」

雨音のさまざまな“オノマトペ(擬声語)”を作者が得意な書道で表現。音を可視化する面白さを狙った。

④杉山沙蘭「Light」

杉山さんは2作品を上映。こちらは没入感をテーマに照明のONと OFFによる瞬間移動を表現した。

⑤平賀拓真「Laundry」

「日常が創り出す暗闇」として、洗濯中の電気洗濯機の中をイマジネーションを発揮して表現した作品。

⑥赤松武彦「誰かが見た夢」

「夢」をモチーフに、私たちの頭の中に潜む「不可解さ」や「不思議さ」を追求した作品。

⑦三田村優菜「ため息の音色」

文字を書いたり、ピアノを弾いたり、日常の中の音で表現されたシンプルながら、力強い作品。

⑧秋山朋樹「日和乞」

ドーム映像で上(空)を見上げる行為に着目し、「雨乞」の反対の「日和乞」を着想。民族音楽風の打楽器の響きが印象的な作品。

第二部

⑨鈴木真「脱走」

タイトル通り、放り出された空間をひたすら逃げる男を表現。撮影にはサランラップの芯を使ったそう。

⑩冨田しいな「スキー場と人々」

スマホカメラのタイムラプス機能(間隔を空けて撮影した写真をつなぎ合わせて、コマ送り動画を作る手法)でスキーゲレンデに集う人々を表現。

⑪熊谷南美「捌く」

料理のプロが真鯛を捌くプロセスをさまざまな角度で撮影。ウロコやエラ、ヒレなどのリアルな感触が伝わってくる。

⑫寺本早希「人生」

「非常口」に描かれているピクトグラムの「人生」を描いた。会場にある実際の非常口に「戻る」クライマックスは見事。

⑬濱田凜香「ニュースフィード」

SNSに流れるさまざまなニュースを追う目を表現。ドーム映像とSNSの「没入感」を重ね合わせた表現が面白い。

⑭加藤陽奈子「花が咲く時」

フルドームの表現手法を生かし、手書きのマンダラ模様が次第にドーム全体を埋め尽くしていく。

⑮團真生「時」

ツボミから美しく開花し、輝きの時を迎え、やがて散っていく……バラの一生をモチーフにした表現。

⑯田中慎二「生きる命」

空間の向こうから次々に飛んでくる無数の言葉。コミュニケーションを支える言葉の力をドーム空間全体で表現した。

全ての発表終了後、学生、教職員、外部の方々など会場の来場者全員に配布された投票用紙で「会場賞」を選出。集計の結果、⑧秋山朋樹「日和乞」が選ばれました。また飯田講師が選ぶ「授業賞」には⑯田中慎二「生きる命」、ゲストの金子氏による「特別賞」①塚本夏帆「クロスロード」がそれぞれ選ばれています。
金子氏は「特別賞」に選んだ塚本さんの作品に対して「センスの良さ、引き出しの豊かさに驚かされた。この人と仕事をしてみたい」と絶賛。また「世界でも珍しいドーム映像の授業を開講している玉川大学と飯田先生はほんとうに素晴らしい! 今回学生さんの自由な発想で創られた作品をたくさん見て、自分も(ドーム映像を)創りたい気持ちが高まった」と話されました。

また飯田講師は「学生の作品を見て、あらためてドーム映像のポテンシャルを感じる。かっこつけずにありのままに表現する姿勢が大切で、技術は後からついてくる。学生たちはドーム空間にどう向き合うかをそれぞれのやり方で突き詰めてくれた」とコメントしました。
まったく異なるコンセプトと表現のドーム映像16作品が次々とプラネタリウムの天空に映し出された1時間半。観客席の人々はドーム映像に没入しながら、その可能性や面白さを実感しました。
わが国ではまだまだフルドームの映像表現は未開拓分野ですが、「Fulldome Night」で切磋琢磨する芸術学部の学生の中から、将来、日本を代表するドーム映像クリエーターが誕生するかもしれません。

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