「世界を舞台に 〜多様な人々と働くとはどういうこと?〜」国際教育センターの講演会が開催されました。
国際教育センターでは海外留学や海外研修などの支援を行うだけでなく、さまざまなイベントなどを通して世界に対する関心を高めるなど、学生と世界とを「つなぐ」役割を果たしています。10月15日には元外務省国際機関人事センター所長の伊藤光子氏を講師にお招きし、「世界を舞台に 〜多様な人々と働くとはどういうこと?〜」というタイトルで講演会を行いました。
国際機関人事センターは、国際機関で活躍する日本人を増やすことを目的に設立されたもので、伊藤氏は多くの人材を海外に送り出してきました。今年の7月に12年生(高校3年生)を対象に行われたグローバルキャリア講座の第1回講演でも、伊藤氏にお話をしていただきました。その時に聴講した生徒も数名が今回の講演会に参加していました。
講演会は、まずセンター長である松本博文先生の話から始まりました。「企業がグローバル化を推進する中、社会がその方向へと向かうのは自然な流れです。『それなら、自分も活躍できるのかなぁ』と思う人がいるかもしれませんが、そう簡単ではありません」。松本先生によれば、大切なのは社会とのインターフェース(接続)の部分で、それをいかに具体化できるかが重要であり、社会に出る前からアプローチしていくことが必要なのだそうです。では海外で活躍するには何が大切なのか、今回の講演で伊藤氏に語っていただきました。
講演では、伊藤氏の仕事や海外在住の経験から、世界で活躍する上でのいくつかの事例を挙げ、それを実現するには何が重要であるか話がありました。たとえば、タンザニアに住んでいた当時、青年海外協力隊の日本人が100名ほど派遣されていたそうです。野菜の栽培法だけでなく土作りから販売までを指導した野菜栽培協力隊など、彼らは現地でも非常に感謝されていました。「ただ、現地の人は日に3時間程度働けば十分だと考えています。そうした状況を受け入れる許容性も、実は必要なんですね」と伊藤氏は言います。また国連には日本人が約800人「しか」いないことにも言及しました。外務省としても国連で働く日本人を増やすために、JPO派遣制度を設置して志望者を支援しているといいます。この他にも外交官や民間企業、さらには起業といった事例についても話がありました。
その上で伊藤氏が考える「国際社会で活躍するために必要なこと」とはどのようなことなのでしょうか。「それは異文化理解、日本人であることの自覚、語学力を含めたコミュニケーション能力、組織に貢献できる専門性、ポジティブな精神などになると思います」。「海外に行くからこそ、自分のアイデンティティである『日本人であること』を強く自覚すべき。」といった意見に、学生たちは真剣に耳を傾けていました。
質疑応答では、講演の中であった「組織に貢献できる専門性が必要である」という話に関連して、「専門性がなかなか見つからない場合はどうすればいいですか?」という男子学生から質問がありました。それに対しては「自分の好きなことなら続けられるはずです。私は海外で暮らすことが好きという思いがきっかけで、外務省で働きたいと思うようになりました」との答えがありました。また、農学部の女子学生からの「国際社会で活躍したいのですが、学生時代に自分の将来についてどれくらい考えましたか?」という問いに、伊藤氏は「留学などで長期間海外に行くと、観光旅行では気付かなかったようなことにも目を向けることができ、自分が世界で何をしたいのかが見えてきます。海外経験は、自分を見直す良いきっかけにもなるはずです」と回答しました。この他にもさまざまな質問が寄せられ、予定していた時間では収まらないほどでした。
伊藤氏が拍手に送られて退出した後、参加した学生に話を聞きました。「将来は小学校の教員になりたいのですが、子供たちにも文化の違いを伝えていきたい」、「海外に行ったら、自分が代表的な日本人として見られているという視点はありませんでした」、「ボランティアで海外に行くことが多いのですが、異文化を理解するという部分が自分には足りなかったかもしれないと思いました」、「海外で働くための情報はインターネットでも得られますが、長年現場で働いてきた方の言葉には重みがあり、勉強になりました」などの感想がありました。また講演会のアンケートにも「海外で活動する魅力を知るにつれ、海外で働いてみたいという思いが強くなった。」、「外交官という職業について知る事ができ、自分の将来の選択肢が広がった」といった回答がありました。
国際教育センターでは、今後も学生の国際的な学びや就職に対する意欲をかき立てるような講演会を企画していきます。今回の講演会が、海外留学を考えている人や海外に興味がある人にとって、自分の夢に近づくための一歩となったと思います。