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11月16日(日)、玉川大学教職大学院「学校教育実践研究会2014」が開催されました

2014.12.22

玉川の丘へ集まった320名の参加者が、課題を話し合い、講義を受けました

玉川大学に教職大学院が開設されて、今年で7年目を迎えました。教職大学院では毎年2回、修了生を招いて現役大学院生や教授陣とともに「フォローアップ研修」を行っています。この研修を全国の先生方に向けて公表しようと企画したのが、昨年の「学校教育実践研究会2013」でした。全国から小中学校の先生方、教育委員会の方、教職大学院生や教員を目指す大学生らが参加され、たいへん好評だったことから、今年も11月16日(日)に開催。玉川のキャンパスには約320名の方々が集まりました。

午前中は、全体会として玉川学園講堂において基調報告を行いました。玉川大学大学院教育学研究科教職専攻(教職大学院)主任・田原俊司教授による開会の挨拶では、「山積する教育問題に経験則で対処してきたが、それでは解決できない問題が増えています。教職大学院ではビジョンに裏打ちされた実践を続けており、今日の午後から行われる分科会ではその実践に基づき、今日的な問題の解決に向け、みなさんとともに有意義な討議と発表を行いたいと思います」と述べました。

「学校教育の原理原則に立ち戻り、学校の信頼性を見直すことが必須」(小原芳明学長)

引き続き、中央教育審議会委員を務める玉川大学小原芳明学長による「教師としての信頼性、不満足感」と題した講演を行いました。小原学長は「『信頼』の定義は、『一定の達成目標を、ある定められた期間内に、ある条件のもとで達成すること』であり、その度合いが『信頼性』といえるでしょう。これを学校に当てはめると、達成目標や期間、条件も多岐にわたり非常に複雑です。一方満足感と不満足感は信頼同様に主観的であり、感情要素の強い現象です」と述べ、「不満足感は達成と期待の関数から捉えることができる」とし、試験に挑む生徒2人の結果と満足感を例に挙げて説明しました。


当日のスライドより
さらに、「父母の学校や教師に対する不満には、達成と期待の二つの要素が関わっています。適正な表現で目標を掲げ達成に努めることが学校と教師の社会へ対するアカウンタビリティー(説明責任)であり、父母や子供たちは学校と教師へ対する満足度と信頼を高めるために必須となる条件遵守、期待を達成させる努力をすることが公教育を提供している社会へのアカウンタビリティーとなるのです」として、今日の教育現場で取り上げられている学校や教師への信頼性の低下や不満といったことを解決する際に、これらの関数を持って考えることが一つの解決策になるとしました。最後に、「高度情報化社会、グローバル化社会にあって、古い枠組みのままでは学校の信頼性向上の努力にも限界があります。学校の信頼性を上げるために、達成目標、期間そして条件までをゼロベースで考え直す時代にきているのでしょう。温故知新とあるように学校教育の原理原則に立ち戻って新しい学校の信頼性を見直すことが必須であることを認識していただきたい」と結びました。

「子ども一人ひとりに対する教育愛の実践を」(長野 正 教職大学院教授)

続いて、玉川大学大学院教育学研究科長・長野正教授が「授業力の向上を目指して―どの子にも確かな学力を育てる教師力―」と題した講演を行いました。「玉川大学・玉川学園を創立した小原國芳は日本教育界で欠くことのできない教育研究者・教育実践者です。大正10年、小原は自分の教育理念の『全人』という概念を子供にもわかりやすい言葉で、『きれいな心 よい頭 つよい体』と伝えています。同時にこの理念に基づいて実践していく源は教師であり、教師力であると強調し、昭和20年代に教育学科を他に先んじて立ち上げたのには、教師養成の問題が強くありました。その時に玉川で学び、教師として世に出ようとする後進に向かって、『子供に慕われ 親たちに敬われ 同僚に愛せられ 校長に信ぜられよ』と教師訓を贈りました。小原は、教育の結論は教師その人なり、と言っています」と長野教授は述べました。さらに「教師力」を具体的に4つに絞り、「学習指導力」「幼児・児童・生徒指導力」「学級経営力」「協働力」であるとしました。とくに「学習指導力」、今日的には「授業力」は教育に携わる専門職の要、教師の腕前の見せ所であり、社会的にも保護者からも信頼を持たれる基盤であるとしています。個人差の大きい幼児・児童・生徒に対し、一人ひとりに応じた働きかけをするためにも、さまざまな技術を組み合わせ展開していくことが、専門家としての技量であるとしました。「教師は授業の設計者であり実施者であり改善者。授業力の向上を目指し、日々の研修、考察を繰り返すことは、子供一人ひとりに対する教育愛の実現だと考えています」と結び、午後の分科会での研修・発表につなげました。

9つの分科会を開催。要点を突いた解説や講義に会場は熱気に包まれました

午後から玉川学園低学年校舎教室に場所を移して9つの分科会を実施しました。各分科会では、学校教育の抱えるさまざまな今日的課題や話題の報告を受け、その解決に向け参加者で話し合います。さらに玉川大学教職大学院の専任教員等がその実践的専門性を活かして解説や講義を行います。
分科会とテーマは次の通りで、今年から新たに「特別活動」分科会が開催されました。
「国語教育――文学の読みと言語活動」
「理科教育――子供の学びと理科指導」
「道徳教育――道徳的実践力を育てる教師力」
「ICTを活用した教育――ICTを活用した情報教育」
「特別支援教育――通常の教室の中の指導の難しい子供たちのために~行政と学校現場(通級指導教室)から教師力向上の具体的提案~」
「小学校における外国語活動――『話したい!』と思う気持ちを育てる表現力の育成」
「教育相談活動(生徒指導)――メディア・コミュニケーションと子どもの人格形成~“ネット依存・SNS依存・ゲーム依存・ネットいじめ”への理解と対応~」
「学校経営――若手教員をどのように育成すべきか」
「特別活動――子どもたちを取り巻く諸問題と学級活動の有効性」

各教室は、参加者でぎっしりと埋まりました。話題提供者は現役の小学校教諭や東京都教育委員会の方、あるいは民間のアドバイザーなどがみられました。どの分科会でも発表を聞き漏らすまい、見逃すまいと、みなさん真剣な表情です。
分科会の様子をいくつかご紹介します。
「ICTを活用した教育」では、姫路市立城乾小学校教諭の許鐘萬先生が「ICT機器を効果的に活用した指導法の工夫」と題して、地域の魅力を探り、観光スポット紹介にタブレットを活用した事例などを発表されました。単に最新機器の導入が子供の興味を引きつけるだけでなく、習熟度の向上や他科との連携、仲間との使用のルール順守などさまざまに役立つとしました。授業風景の動画が紹介され、じつに楽しそうに学ぶ子どもたちの姿が印象的。実践のためには、どの子も使える仕組みづくりや、子供の活動を組み立てる工夫や設計力が重要であることを学びました。

「特別支援教育」では、まとめの講義として、安藤正紀教授(玉川大学教職大学院)が、通常教室には指導の難しい子供たちが数名在籍する現状を踏まえ、特別支援教育に携わっていくためのポイントを熱く解説しました。「毎時間の授業の仮説にこだわること。この子はこうすれば理解できだろう、静かになるであろう、こう反応するだろう、という観察から築いた仮説に徹底的にこだわってほしい。そのためには、子供をしつこく観察すること。忍者のように付きまとい、子供を深く理解することが大切です」と笑いを交えながらも要所を突いた話が続き、特別支援教育に熱意を傾ける先生方、苦慮する先生方を大いに励ましていました。

「教育相談・生徒指導」では、インターネットに関わる問題を取り上げましたが、質疑応答の場面では現場の先生方や教育学部の学生からの質問などが相次ぎました。学校で優等生の子供がネット上では罵詈雑言を並べる、友人との付き合いが苦手で暴力的だがゲーム中はおとなしい、4歳頃から親のスマートフォンで動画を見続けている等々。これらに対し、ネット依存アドバイザーでありエンジェルズアイ代表の遠藤美季氏、海老名市立東柏ヶ谷小学校教諭の高田枝里先生、田原俊司教授(玉川大学教職大学院)、近藤昭一准教授(玉川大学教職大学院)は、家庭内のルール作りや保護者がSNSやゲームをよく知ること、子供の得意な部分を探し伸ばして自信をつけさせることが大切とし、ネットと健全に向き合うには家族の対応が重要と話していました。

参加者へ本研究会参加についての感想をうかがうと、「指導に悩むこともあるが、非常に明解な講演を聴くことができて有意義でした」「小人数グループでの討議の時間もあり、普段は教育学部の学生と話す機会はないが、これから教師として頑張ろうとする姿に触れ、自分の襟を正しました」。なかには、現役の高校3年生の姿もあり、「従兄がパネラーとして発表するので参加。玉川大学教育学部へ入学し、小学校教諭を目指したいと考えています。先生方が何を考え、教えようとしているのかを学ぶことができてとてもよかったです」と話していました。たくさんの参加者にご来場いただき、盛り上がりをみせた「学校教育実践研究会2014」。今後、先生方が指導する上での一つの道筋になることを関係するスタッフ一同、切に希望しています。

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