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大学教育棟 2014で「学問とフィールドワーク」をテーマに、知の最前線に触れるアカデミック・ラウンジが行われました。

2015.12.01

大学教育棟 2014では、さまざまな教育活動が行われています。特にアカデミック・スクエアは、ゼミの発表から公開インタビューまで多くのイベントで活用されています。10月30日(金)、このアカデミック・スクエアを会場に「学問とフィールドワーク」と題して、玉川大学出版部主催のアカデミック・ラウンジが開催されました。
このアカデミック・ラウンジとは、学内外で知の最前線にいる様々な研究者を招き、学生と直接触れ合い、お互いに語り合う場となることをめざして始めたイベントです。授業での学びとはひと味違う「知」に触れることで、それを起点に興味の範囲をさらに広げていくことをねらいとしています。

学習院大学 赤坂氏

今回は民俗学者であり、学習院大学で教鞭を執る赤坂憲雄氏と、同じく民俗学者である本学リベラルアーツ学部の八木橋伸浩教授が、学問におけるフィールドワークの重要性や、その面白さについて語り合いました。
赤坂氏は編著書に「フィールド科学の入口」(全10巻、玉川大学出版部)、著書に『東西/南北考 いくつもの日本へ』(岩波新書)など多数がある他、2007年には『岡本太郎の見た日本』(岩波書店)でドゥマゴ文学賞を受賞、東北地方を中心に長年フィールドワークを行い、「東北学」を提唱したことでも知られています。

リベラルアーツ学部 八木橋教授

まず八木橋教授が赤坂氏のフィールドワークの手法について質問すると、赤坂教授は、「テーマを設定した上で現地に赴くのが一般のフィールドワークであると思います。一方で、私の場合はテーマを定めず、まずはそこに住む人と接することで、その暮らしや生き様を知っていくことが多いですね」と、自身の手法について語りました。それを受けて八木橋教授も「私も調査に行くというよりも、飛び込んで話を聞く」そうで、自身の手法を「受け身のフィールドワーク」と表現しました。

そうした「受け身のフィールドワーク」で何より重要になるのは好奇心で、先入観を壊していかないと豊かなフィールドには出会えません。その一方で、「事前に文献などの資料を読み込むことも非常に重要」という言葉も印象的でした。「もはやフィールドのみで完結する世界はない」と語る八木橋教授。知識を備えた上で対象を見る「フラットな視点」が、フィールドワークでは求められます。
次に赤坂氏が、キーワードとして「コモンズ」を挙げました。

「3.11以降、相馬市でかつての潟を干拓して水田にした場所の水が引かず、高齢の農業従事者が困っているそうです。しかし、人口が急速に減少する今後は誰かが所有する水田よりも、皆で利用できる入会地(いりあいち)のほうが必要になるでしょう。入会地とはまさにコモンズのこと。このラーニング・コモンズも、学生の皆さんがさまざまな活用法をされていますよね」。このような赤坂氏の説明を聞いて、学生から「これからの社会では、そうしたつながりが必要になってくるのでしょうか」といった質問がありました。それに対して赤坂氏は「人口減少は、これからの重要な課題。社会のコミュニティもビジネスもパイが小さくなる中で、デザインをし直さなければなりません。その際にコモンズという考え方が、あらゆる分野で重要になってくるはずです」と答えてくれました。

そして「フィールドワークは、現地を訪れなければできないものではない」とも赤坂氏は語ります。実際に、日本における民俗学の草分けともいえる柳田國男は、書物の中でもフィールドワークを行っていたという話もありました。それを受けて、「インターネットに掲載されている古地図を見ながら、その土地で過去にどのようなことが行われていたのかを探っていくのも、現代のフィールドワークの一つだと思います」と八木橋教授。渋谷という都市の暮らしを探る「渋谷学」に取り組んでいる八木橋教授自身も、そうした手法でフィールドワークを行っています。

参加した学生からは、「印象に残ったのはコモンズです。僕は音楽に興味があり、就職後も音楽に関わるクリエイターを支える団体で活動したいと思っています。その際に、赤坂先生が話していたコモンズという考え方は、非常に重要になってくるのではないかと感じました」(男子学生)というコメントがありました。
「学問とフィールドワーク」と聞くと、ついついかたいイメージを持ってしまいがちです。しかし、フィールドワークは自分の興味があることからテーマを決めていったり、そこで得た経験から新たな発見をしたりするもの。それは何かを学ぶ上で非常に楽しい過程であり、フィールドワークという考え方自体があらゆる学問分野に生かせることを学生たちは実感したことでしょう。

 

玉川大学出版部「フィールド科学の入り口」

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