玉川のアクティブ・ラーニング 6
低学年 髙橋慎一教諭の授業
観察と発見をもとに調べてまとめる「動物調べ」で問題解決力の基礎をつくっています。
髙橋慎一 Shinichi Takahashi
青山学院大学大学院文学部教育学専攻修士課程修了。2001年から玉川学園で教える。幼稚部、低学年、中学年で教えた経験を持つ
オオカミの写真が電子黒板に映し出された1年きく組の教室。1月下旬のことです。髙橋慎一教諭が「オオカミの顔に傷があったね。なぜかな?」と問いかけます。前週に行われた多摩動物公園での見学を振り返っているのです。
「ケンカをするから!」と児童。
「どうして?」
「誰が強いかを決めるため!」
授業の名前は、総合科「動物調べ」。数種類の動物の中から、児童が調べる対象を決め、実際に動物園で観察して発見をまとめる授業です。年明けから2月下旬の玉川学園展まで時間をかけて取り組みます。今年はオオカミ、オランウータン、ターキン、モウコノウマ、レッサーパンダ、ユキヒョウの6種類が観察対象となりました。
この日、きく組の教室に集まったのは、オオカミを観察したグループ。異なるクラスから集まりましたが、興味の対象はオオカミで一致しています。同じ時間に、各教室で他の動物のグループも観察結果や発見を共有しているのです。
きく組の教室で「おーっ」と歓声が上がったのは、電子黒板にオオカミの動画が映し出されたとき。放飼場の高所に上って周囲を見回す姿から、髙橋教諭がオオカミの警戒心の強さを指摘します。
さらに髙橋教諭はペットとして身近なイヌを引き合いに出し、オオカミに関する理解を促しました。
「オオカミの顔をよく見てごらん。彼らはイヌの祖先だけれども、顔がイヌに比べると長いね。その長い顔の先にあるのは……」
「口です!」
「口が長いとどうなる?イヌとどんな違いが考えられる?」
「歯が多くなる?」
「そう!メモしておいてね」
教員が示す着眼点が思考を刺激し、自然に答えへと導かれます。見学に先立ち行われた事前授業で児童はすでに食べものや脚のかたちなど、各動物の特徴に関し、焦点を絞って学んでいます。見学後の授業では、自分が気づかなかったことも含めて学び取ります。
「対象を見つめ、関心を掘り下げる過程を通して主体的に考える姿勢が身につきます。オオカミの顔から歯の数について類推したように、論理的に考える力や問題解決力も育まれます」と髙橋教諭。「動物調べ」は、教員が伝える知識と児童の主体性が融合したアクティブ・ラーニングなのです。そんな学びの成果を、児童は玉川学園展をめざしてまとめます。
本物をじっくり観察することで知識が深まる
私が観察したのはモウコノウマで、いろんな動きが見られました。注目したのはケンカ。干し草を食べるとき、2頭がうしろ足でおしりをけ飛ばしあっていました。片方があとから来た仲間に怒ったんだと思います。「ヒヒー」と鳴いていました。シートには観察したことをがんばって書きました。
【塚原麻唯子さん】
僕は木登りが好き。レッサーパンダは木登りが得意だと聞いて、どう登るか知りたくて観察することにしました。みんな木の上に登ると、エサの竹の葉を食べていました。あちこち歩き回っていたのも面白かった。エサを探していたのかな。今度動物園に行ったらオオカミを観察したいと思っています。
【中村空渡さん】
学びのDATA
「動物調べ」は、1年生が例年3学期に行うもので、自然・社会・生活・行事・造形など、多岐にわたる学びを展開する「総合科」の取り組みのひとつ。調べた結果をまとめる際の形式は、新聞や絵などクラスの担任によりさまざまで、成果は玉川学園展で展示する
玉川学園展で成果を展示するまで
事前授業
- 学年全体で行い、児童は自らの関心によって調べる動物を決める
動物園見学
- 多摩動物公園で実施。専門のガイド(動物解説員)の説明を受けながら観察
事後授業
- 調べた動物のグループごとに行う
2017年1月27日取材
『全人』2017年3月号(No.814)掲載