タマキクラゲ
冬の寒さも緩み、春に向かって徐々に暖かくなっていくころ、ひと雨降った翌日に玉川の丘を歩いていると、細い枯れ枝に干しブドウのようなものが鈴なりになっているのを見つけることができる。
タマキクラゲの子実体(胞子が作られる構造体)は、シイタケのような、いわゆる「きのこ型」ではなく、丸いクッションのような形をしている。内部はゼラチン質で、指でつまむと、何とも言えない、柔らかい感触がする。このように一般的なきのこのイメージとかけ離れているため、これがきのこだと知らない人も少なくないだろう。
雨が降った後は水分を吸って大きく膨らんでいるが、乾燥するととても小さく硬くなる。春から秋にかけて広葉樹の比較的細い枯れ枝に、所狭しと発生する。まだ緑の葉が広がる前の、春先のほうが見つけやすいかもしれない。
中華料理に入っているキクラゲと名前は似ているが、近縁でなく、子実体の構造も大きく異なる。とはいえ、タマキクラゲもキクラゲと同様に食用菌で、さっと茹でて酢の物にしたり、わさび醤油で食べたりすると、ぷりぷりした食感を楽しむことができる。
(農学部准教授 石﨑孝之)
『全人』2017年5月号(No.816)より
タマキクラゲ(珠木耳)
学名:Exidia uvapassa
ヒメキクラゲ科
春から秋、落葉広葉樹の枯れ枝上に群生する。子実体はゼラチン質で、類球形~平板状(乾燥状態によって異なる)、大きさは1~2cm程度で、隣同士が接しても融合することはない。色は淡褐色~赤褐色。上表面は微細なイボで覆われる。食用。日本、韓国に分布する