クワコ
クワコはキャンパス内のクワの木で見つかるカイコの原種(野生種)。強度の改良の結果、カイコが空を飛ぶことを忘れてしまったのに対し、よく飛ぶ。写真はメス成虫が性フェロモンでオスを呼んでいるところだが、両種で成分が同じなので、窓辺にカイコのメスを置いておくと、クワコのオスが森の中から飛んできたりする。
幼虫はカイコと違って茶色っぽく、クワの木の樹皮に似ている。しかも鳥やアシナガバチの捕食を避けるため、枝に擬態し、動かないことが多い。それでも鳥に見つかってしまった場合など、目玉模様で顔に見える胸部を膨らませて、蛇を装う作戦までもっている。
クワコは年に2回発生するが、6~7月に卵を生む場合は個ずつ葉に産み付ける。ところが秋に越冬卵を産む時は、葉には産み付けず、幹にかためて産む。葉に産み付けられた卵は落葉とともにどこかに飛ばされてしまうことを知っているのである。
繭は薄い黄色で、カイコの原種だけあって、糸の量も多い。改良の経緯については、何しろ5,000年以上も前のことで、それがわかる歴史的資料は存在しない。
(名誉教授 佐々木正己)
『全人』2017年10月号(No.820)より
クワコ
学名:Bombyx mandarina
カイコガ科
カイコの原種と考えられており、日本全土に分布。大きさは、成虫が開張32~44mm、幼虫は36mm程度。雌雄ともによく飛翔し、蛾にしては珍しく、配偶行動時刻は昼前後。別種の扱いになってはいるが、カイコとの間で容易に雑種ができる