アカリス

カナダのナナイモ校地を散策していると、どこからともなくアカリスが姿を現した。せわしく何かを食べている。ビッグリーフメープルだ。翼果の翼部分を歯で切り取っては投げ捨て種子だけを綺麗に食べている。いったいいつまで続くのか。そのあまりの食べっぷりに見とれ、いつの間に1時間が過ぎていた。
アカリスの食事メニューは実に多様だ。それは種子だけには留まらず、芽や花、樹液、樹皮などの植物質からキノコ類や昆虫類、ときには鳥類や哺乳類にまで及ぶ。晩夏から秋には、厳しい冬に備えて球果の貯食にも精を出す。こうした餌資源を守るためになわばりを形成し、他個体の侵入にも常に目を光らせている。
アカリスの旺盛な食欲はときに樹皮剥ぎなどを通して林業生産に影響をもたらす。一方で開発や外来種の導入など人間活動もアカリスに影響を及ぼしている。バンクーバー島での最大の脅威はハイイロリスの存在だ。人間によって持ち込まれたことでアカリスの生息は脅かされている。人間活動による野生動物への影響。それらに目を向けることは、彼らとの共存を考えていく上で重要な課題である。
(農学部助教 關 義和)
『全人』2018年2月号(No.824)より
アカリス
学名:Tamiasciurus hudsonicus
リス科
アラスカと、カナダからアメリカの北西部(ロッキー山脈)と北東部(アパラチア山脈)まで幅広く分布する小型の齧歯目。成獣の全長は28~35cmほど、体重は200~250gほど。バンクーバー島には亜種であるT.h.lanuginosusが生息する

