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アステカ人の贈り物 栽培トマト

野生種から栽培種トマトへの変遷。左は野生種トマトの祖先種で右にいくにつれて栽培種トマトになる。中央の襞を持つトマトは栽培種への中間型である

栽培トマトはいったいどこから来たのだろうか? それは中米、メキシコ地域であると言われている。この地に住むアステカ人の祖先は遊牧民であり、紀元前1000年頃に南米・アンデス山地からメキシコ湾沿いに移り住んだ。その際にペルー周辺の野生種トマトを持ち込んで栽培を始めたようである。

アステカの人々は「トマティル」という言葉でトマトを表現し、これがトマトの語源になった。現地に分布するトマト果実の大きさと形は野生種と栽培種の中間である。例えば野生種トマトは1~2cmだが、この地域では3~5cmで形はいびつで襞(ひだ)状のものが多い。果実を大きくするためにゼリーの入っている部屋の数を増やしたからである。現在我々が食べているような10cm以上で球形の果実が誕生した所以である。

トマトは世界中の食文化に劇的な変化をもたらした立役者である。アステカの人々は紀元前から「食の産業革命」を果たしていたことになる。野生種から栽培種へと移行する中間型のトマトを知ることは品種改良の原点を知ることに繋がる。本学の温室にはこのようなアステカの人々の想いが詰まったトマトがたわわに実っている。

(農学部教授  田淵俊人)
『全人』2018年5月号(No.827)より

栽培トマト

学名:Lycopersicon esculentum Mill.(Solanum lycopersicum)
ナス科トマト属(ナス科)

ナス科の多年草。最も古い栽培トマト。中米から北米・メキシコの標高50m~2,000mに自生する。この地域のトマトは大きさや形が多様である。これらの地域では、気候が温暖で年間平均気温約25℃、年間降水量1,700mmで高温多湿、古くから大型のホオズキとともに肉を煮込んで利用する食習慣があった。多くは扁平状で襞が多く、果実の中のゼリーが入る部屋数が非常に多いのが特徴。果実の色は赤色やピンク色が多いが、中には黄色、紫色のものもある

中米・パナマの栽培種トマト(野生種と栽培種の中間型)。果実の形は扁平でいびつになり、空洞となる。ゼリーの入る部屋数が多い
メキシコの栽培種トマト(野生種と栽培種の中間型)。果実は扁平でゼリーの入る部屋の数が多くそれぞれが襞状になる

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