キムネクマバチ

学園内で桜が咲く頃に、キムネクマバチの雄を見かけるようになる。雄は雌との交尾のためになわばりをもつ。雄は空中で静止した状態で飛翔(ホバリング)し、侵入者に対してなわばりを守ろうとする(写真左)。雄は黒い物体に対して反応するようで、侵入した同種の雄を追いかけ体当たりで排除し、あるいは飛んでいる鳥に対しても追尾しようとする。
一方、雌は雄にそれほど興味を示さないのか、花で熱心に採餌する姿を見かける。5月中旬には交尾期が終わり、雌雄ともに姿を見かけなくなる。それは学園内のどこかで営巣を始めたからである。雌は強靭な大顎(あご)で枯れ木にトンネルを掘り、その中に花蜜で固めた花粉を貯蔵し、産卵する。幼虫は花粉を食べながら巣内で育ち、羽化後しばらくは母巣に留まる。その間、母親は巣穴の入り口で巣を守る(写真下左)。母親は巣の侵入者に対して噛みついたり、腹部で穴を塞ぐ行動をする(写真下右)。親の保護により、無事に育った新成虫たちは秋には巣立ち、越冬し、翌春に繁殖を始めるのである。彼らの縦横無尽に飛び回る姿が、春の風物詩となっている。
(農学部教授 佐々木 謙)
『全人』2018年11月号(No.832)より
キムネクマバチ
学名:Xylocopa appendiculata
ハチ目ミツバチ科
国内最大級のハナバチで、胸部が黄色いことから、「キムネ」という名が付けられている。雄の頭部には黄色い三角形の模様があり、雌には頑丈で大きな大顎がある。英名はLarge carpenter beeで、雌が大顎を使って木に穴を掘る姿が「大工(carpenter)」を連想させることに由来している

