マツオウジ
わが国では昭和50年代から松枯れの被害が報告されており、玉川学園のキャンパス内のマツの木も松枯れの影響で毎年伐倒されている。そのため学園内にはマツの切り株が多数みられるが、何年か経つとこれらからキノコが発生してくる。
マツオウジは、マツ科樹木をはじめとする針葉樹の切り株や倒木から発生する。肉質のしっかりしたキノコで、大型のものでは20センチを超えるものもあり、多くは株立ちする。玉川学園では5月頃から子実体の発生がみられ、梅雨の時期や初夏でも見つけることができる。大きさや色、形はなんとなくシイタケに似ており、以前はシイタケと同じ属として扱われていた。
マツオウジ子実体の独特な点は、さわやかなマツの香りがすることである。また、実がしっかりとしているので汁物や煮物に加えて調理しても型崩れしない。焼いても香り高く、どことなくマツタケを楽しんでいるかのような感覚になる。ただし、人によっては消化器系の軽い中毒症状を起こすことが報告されているので、食べ過ぎに注意してほしい。生焼け状態のものも禁物である。
(農学部准教授 石﨑孝之)
『全人』2019年4月号(No.837)より
マツオウジ(松旺子)
学名:Neolentinus lepideus
キカイガラタケ科
汎世界的に分布し、針葉樹の枯木に発生する。傘は黄褐色から類白色、大きさは5~20cm、細かな鱗片が散在する。ひだは垂生し、周縁部はギザギザの鋸刃状である。柄は円筒状で、表面に鱗片が付着する