カイコ

幼虫時代を通して食下する桑葉の約90%の量をこの時期に食下する
1859(安政6)年の横浜開港をきっかけに、原町田周辺はカイコの繭からつくられた生糸を横浜に運ぶ人馬の往来で賑わっていたことだろう。
小田急線町田駅の東口広場に「絹乃道」碑が建てられている。この碑が起点となる原町田中央通りは、ここが八王子と横浜を結ぶ街道であったことを教えてくれる。
小原國芳がこの丘に学園を開学した当時、全国で約220万の農家が養蚕を営んでいた。きっとこの丘の周辺にも、たくさんの桑畑が広がっていたはずだ。
5齢期のカイコが桑葉を食べる勢いは“すさまじい”。それは繭をつくるためのたんぱく質を桑葉から大量に取り込むためだ。そのため養蚕農家の子どもたちは9、10の年の頃になると、桑摘みを手伝うのが普通だったという。
しかし今日、わが国の養蚕業は衰退してしまった。東京都に現存する養蚕農家は数戸。残念ながら、今を生きる子どもたちにとって、カイコは身近な生き物ではない。
それでもこの丘では、今日もどこかでカイコが「生きた生物教材」として玉川っ子や大学生の学びを支えている。このことを忘れないでほしい。
(農学部准教授 佐治量哉)
『全人』2020年11月号(No.854)より
カイコ
学名:Bombyx mori L
カイコガ科カイコガ属
カイコは蝶や蛾の仲間(鱗翅目)の昆虫である。標準和名は「カイコガ」であるが、一般に「カイコ」と呼ばれる。この呼び名の語源は諸説ある。その一つが『日本書紀』(720年)で、神蚕(カミコ)からカイコになったと考える説である


