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ハチジョウシュスラン

開花初期のハチジョウシュスラン

鹿児島南さつまキャンパス久志農場周辺の緑豊かな森林や付近の社寺の境内には、エビネやガンゼキラン、セッコクなどの美麗な花を持つランの仲間(ラン科植物)がみられるが、森林内にはひっそりと「葉が美しいラン」も自生する。このハチジョウシュスランがまさにそうである。濃い緑の葉の中央に入る白斑は、まるで黒板にチョークで印を付けたようである。種内で斑の変異も認められ、葉脈上に網目状に白斑が入るタイプはカゴメランと呼ばれる。また、斑の入らない個体(オオシマシュスラン)もみられる。
このような独特な葉を持つが、株が小さいこともあり、森林内で見つけるのは、やや困難である。ある年見つけて近隣に目印をつけておいても、翌年見つからないことも頻繁にある。ナメクジやカタツムリが好んで食害するという話も聞く。多年草ではあるが、もしかしたら、あまり寿命の長くない植物なのかもしれない。一方で、栽培も困難な種とされている。もし出会ったときは、写真に収めるだけに留めて欲しい。なぜこのような葉姿なのか、野生の生き物は不思議だらけで興味は尽きない。

(農学部教授 山﨑旬)
『全人』2021年1月号(No.856)より

ハチジョウシュスラン(八丈繻子蘭)

学名:Goodyera hachijoensis var. hachijoensis
ラン科シュスラン属

名前は八丈島に由来するが、関東や九州南部にも分布する。常緑広葉樹林の林床に生える。本文中で示した葉に斑の入らないオオシマシュスラン(f.izuohsimensis)や、カゴメラン(var. matsumurana)など、同種内で葉の模様は連続的で変異に富む。葉の長さは4~6cm程度と比較的小さな植物

白斑がはっきりした個体。多くの場合、このように葉に食害がみられる
カゴメラン(若干中央にも斑がみられる個体)

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