ナタネ
毎年3月頃に、農学部学内農場から大学7号館を見上げる斜面に菜の花畑が出現します。4月近くになれば桜も開花し、一幅の絵の様な光景が楽しめます。ここはキャンパス内で知る人ぞ知る名所で、訪れる度に、色々な部署の教職員に出会い、心和む春景色に話が弾みます。
ナタネ、アブラナ、菜の花などと呼ばれるこの植物の学名は「Brassica rapa」。誕生の地は地中海に近いトルコの高原付近といわれています。その後、北はスカンジナビアやシベリアへ、東はイラン、アフガニスタンに分布域を広げたようです。その過程で栽培化も進み、西アジア、ヨーロッパではカブ、中国ではハクサイなどに。今や、秋・冬野菜として親しまれています。
また、日本では江戸時代に灯明油を搾油する「菜の花」栽培が盛んとなり、その風景は与謝蕪村によって俳句に詠まれ、文部省唱歌の『朧月夜(おぼろづきよ) 』にも歌われています。
菜の花は、冬を経て花芽が作られ、春の訪れとともに董(とう) 立ち、やがて鮮やかな花を咲かせます。ミツバチも菜の花がお気に入りで、この時期、ブンブン羽音を立てながら花から花へと大忙しです。
(農学部教授 肥塚信也)
『全人』2021年5月号(No.860)より
ナタネ
学名:Brassica rapa
アブラナ科
アブラナ科アブラナ属に属し、カブ、ハクサイの他に、コマツナ、チンゲンサイ、ミズナ、パクチョイなど様々な栽培種が存在する。現在、食用のナタネ油は、近縁のセイヨウナタネ(Brassica napus)種子から搾油されている
2020年度秋学期の「フィールド実習Ⅰ」で栽培したチンゲンサイとカブ
冬に収穫せずそのまま栽培を続けると春には菜の花が咲く
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2020年度秋学期の「フィールド実習Ⅰ」で栽培したチンゲンサイとカブ(左)冬に収穫せずそのまま栽培を続けると春には菜の花が咲く(右)
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菜の花に訪れるミツバチ(撮影=農学部中村純教授)
菜の花に訪れるミツバチ(撮影=農学部中村純教授)