イタヤカエデ
北海道の弟子屈農場で普通に見られ、日本中の山地や公園木としても見ることができる。材は堅く木目は緻密で、家具や建材の材料として広く用いられている。
ところで、メイプルシロップをご存じだろうか。カエデ樹液を煮詰めたものでカナダ産が有名だ。カナダではサトウカエデという樹種を使用するが、イタヤカエデの樹液からもつくることができる。
アイヌ語でイタヤカエデのことをトペニ(乳の木)と呼び、幹に傷を付けできたツララを食べていたそうだ。エゾリスやハシブトガラなどが、折れた枝にできたツララを食べに来るのを目にすることがある。私も舐めてみたが、ほのかな甘みを感じる。ただサトウカエデほどイタヤカエデ樹液は糖度が高くないので、煮詰めるのにコストがかかる。それがネックとなり商業化されていなかったが、最近は各地で商品化され始めている。
わが家も自宅用にメイプルシロップをつくっている。木に開ける穴も僅かで、採取後自身の枝で穴を埋めれば樹木に悪影響は無い。今回で私は筆を擱(お)くが、いつの日か弟子屈農場産メイプルシロップが『全人』で取り上げられることを期待している。
(農学部技術指導員 金井秀明)
『全人』2021年11月号(No.865)より
イタヤカエデ(板谷楓)
学名:Acer mono Maxim
カエデ科
高木で、高さ20m、太さ1mになる落葉樹。樹皮は帯褐灰色から暗灰色で、縦に浅い割れ目ができる。葉は対生で若葉は緑色、秋に黄変する。掌状で7つに浅く裂ける。裂片の先はとがる。鋸歯は無い。果実は2個の翼果からなり、斜めに開く。螺旋を描きながら落下する