ダイコン
「冬野菜」と言えば、ダイコンを最初に思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。おでん、ぶり大根、ふろふき大根。いずれも味がしっかりしみて、寒い冬の夜、体の芯から温まるご馳走です。そのほか、刺身のつま、たくあん、焼き魚に添えるおろし大根、日本食の中でダイコンは、主役ではないけれど、名脇役です。
ダイコンは、アブラナ科に属し、その原産地は、諸説ありますが、他のアブラナ科野菜同様に地中海東岸から黒海付近という説が有力です。やがて、栽培化され、人の移動とともにヨーロッパ、インド、アジアに向けて伝搬したようです。紀元前2世紀のエジプトの壁画には、ハツカダイコンが描かれています。日本には、中国を経由して弥生時代に伝わり、『古事記』や『日本書紀』の記述から推定すると1300年前には栽培されていたと考えられます。
日本のダイコン品種は、他の国に例を見ないほど多様化しています。江戸時代中期には、400を超える品種の記録があるそうです。現在、スーパーマーケットに並ぶダイコンのほとんどが青首系品種ですが、今も各地には日本が誇る多種多様なダイコンがあるのです。
(農学部教授 肥塚信也)
『全人』2022年5月号(No.871)より
ダイコン(大根)
学名:Raphanus sativus L.
アブラナ科ダイコン属
春にはアブラナ科の特徴である十文字の花が咲く。根菜類に分類されるが、葉や莢を可食部とする品種もある