シュレーゲルアオガエル
どこぞの国のカエルかと思いきや、実は日本固有のアオガエルの一種。オランダの動物学者シュレーゲルが自分自身の名前を付けてしまったのだ。動植物の名前にはよくあること。ちなみに長さ40cmにもなる日本最大のミミズはシーボルトミミズと呼ばれている。ニホンアオガエル、ニホンオオミミズとでも改名してほしいところだ。
産卵方法が特徴的で、メレンゲのような泡の中にクリーム色の卵を産む。土手や田んぼの畔に産みつけられた真っ白な泡はよく目立つ。だが、その中に卵やオタマジャクシが埋もれているのを知っている人は少ないだろう。泡の正体はおしっこと粘液を足でかき混ぜたもの。両親が丹精込めて作ったふかふかの揺りかごに包まれて子どもたちは育っていく。雨で泡が溶けると、オタマジャクシたちは田んぼの中へ流れ落ちていく。
モリアオガエルはご存じだろうか? こちらは卵の入った泡を木の上に産みつけ、オタマジャクシが池へダイブすることで知られている。天然記念物に指定している地域もある。しかし、世界的に見れば樹上で産卵するアオガエルは多く、地面に産卵するシュレーゲルアオガエルの方がむしろ珍しい。
(農学部教授 有泉高史)
『全人』2022年11月号(No.876)より
シュレーゲルアオガエル
学名:Zhangixalus schlegelii
アオガエル科アオガエル属
水田や湿地の周りに生息するアオガエル。東京23区内ではほとんど見かけることはないが、学内農場では普通に見られる。モリアオガエルの近縁種だが、体が小さく鳴き声は甲高い。両種ともメレンゲ状の泡の中で卵からオタマジャクシが育つが、産卵場所は異なっている(本文参照)