エンドウ
遺伝学の父、メンデル(Gregor Johann Mendel)は1822年7月20日に、当時のオーストリア帝国内の小さな村(現在はチェコ領)で誕生しました。昨年は、「メンデル生誕200年」。それを記念して多くの科学雑誌にその功績を伝える記事が掲載されました。
今回ご紹介するのは、そのメンデルが遺伝の法則を見出すことにつながった、草丈が大きく異なる二つのエンドウの系統です。下の写真左は、同日に種まきをして14日目のエンドウ。一目で草丈の違いに気がつきます。この草丈の違いは、本葉と本葉の間(節間:せつかん)の長さの違いが積み重なった結果です(写真上)。この節間長の違いは、植物ホルモンのジベレリンの生合成に関わる遺伝子のたった一つの塩基の違いによると、その後1997年に明らかになりました。
科学の発展はこうした小さな発見と研究の積み重ねに支えられています。遺伝学における小さな、けれど大きな一歩を今、改めて紐解くのも意義深いでしょう。メンデルが誕生して201年目の今年、どのような科学の発見があるのか、期待したいところです。
(農学部教授 肥塚信也)
『全人』2023年2月号(No.879)より
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学名:Pisum sativum L.
マメ科エンドウ属
原産は、エチオピアや中央アジア。未熟な莢(さや)を食用とするサヤエンドウ、完熟種子のグリーンピース、和菓子のうぐいす餡の材料としての利用もある