タンカン

北に位置する久志農場の清原園にて
タンカンは1896(明治29)年にポンカンとともに台湾から鹿児島県に紹介され、昭和初期には同県で経済栽培が広がり始めた。最近の国産柑橘の中でもタンカンは果実の発育に必要な温度要求量が高いため、栽培適地は秋冬季が比較的温暖な鹿児島県南部から沖縄県に限られ、栽培歴が長い割に全国的な知名度は今一つである。
栽培地は台風の通り道になる。樹自体は比較的病害には強いものの、強風を頻繁に受けると果実表面には多くの傷や病斑が残る。久志農場の清原園は、風を受けにくく陽だまりが出来やすい地形に開園されている。この立地条件に長年培われた栽培技術が組み合わさり、高品質な果実生産が可能になった。ジューシーでありながらしっかり甘く、でも後味爽やか。この時期の実習に参加し、一発で初めて出会ったタンカンのファンになった学生も少なくない。
最近の研究で、気候変動の影響から関東平野以西の海岸沿いのウンシュウミカン産地は、2050年頃にはタンカン産地になることがシミュレートされている。実際久志農場でもポンカン栽培が難しくなってきているが、30年後の店頭はどうなっているのだろう。
(農学部教授 浅田真一)
『全人』2023年5月号(No.882)より
タンカン(桶柑)
学名:Citrus tankan
ミカン科ミカン属
原産は中国広東省。オレンジとポンカンとの自然交雑で生じたと考えられているが、明確な来歴は不明。ウンシュウミカンよりやや大きめの果実は果皮の色も濃く、オレンジのような球形が特徴。国内最大産地である鹿児島県の主力品種は「垂水1号」で、久志農場でも栽培されている。収穫時期はポンカンよりも少し遅れて2月頃となる

