ニホンマムシ
言わずと知れた毒ヘビだ。素早い動きで獲物に咬みつき毒牙を打ち込む。毒で弱った獲物は対抗手段を失い、あとは反撃の間もなく呑み込まれるのを待つだけだ。
捕食のために進化してきたのは毒だけではない。眼と鼻の間にはピット器官という赤外線受容器を持ち、例え闇夜であっても熱を持つ動物の位置や大きさなどを正確に捉え捕食することができる。
主に夜行性だが、夏や冬眠前後には日中にも活動する。日光浴で体温を上げるためだ。マムシは(卵) 胎生で直接子を産むため、夏は胎児の発育を促進する効果を持つ。
胎児は主に夏から初秋に産まれるが、交尾は前年の夏に行われる。実はマムシは遅延受精という能力を持つ。つまり、数年間に亘り体内に精子を保存し、栄養状態の良い年に受精させることができる。
毒を持つために何かと嫌われ、見つかり次第駆除されることも多い。しかし、咬傷(こうしよう)被害の多くは人が気づかずに不用意に近づいてしまうために生じる。彼らも生態系 の重要な一員である。危険だからと即排除するという考えではなく、咬まれないための対策や教育を徹底し、共存の道を探りたい。
(農学部准教授 關 義和)
『全人』2023年12月号(No.888)より
ニホンマムシ
学名:Gloydius blomhoffii
クサリヘビ科
北海道、本州、四国、九州とその周辺の島々に分布(対馬には別種のツシママムシが分布)。全国的に広く分布するが、東京都では開発などの影響で個体数が減少し、本土部全体では絶滅危惧IB類に指定。町田市のある南多摩地域では、絶滅の危険が最も高い絶滅危惧IA類に指定されている