サンコウチョウ
青空が眩(まぶ)しくむし暑く感じる真夏の8月。セミの声と共に木々の茂みから「フイチイ、ホイホイホイ」と聞こえる鳴き声がする。「ホイホイホイ」だけが特によく聞こえることが多い。古来、わが国ではこの鳴き声を「ツキ、ヒ、ホシ、ホイホイホイ」と聞きなして(月、日、星は3つの光るもの)三光と呼び、サンコウチョウと名付けられた。
英名はJapanese Paradise Flycatcher。木の葉がよく茂り天井部が覆われた暗い林を好む。横枝に止まって周囲の空間を眺めまわし、飛んでくる昆虫類、特にアブやガガンボなどに飛びついて捕食し、再び元の木に戻ることを繰り返すので、「フライキャッチャー」である。その時、雄の長い尾羽が空中に舞ってひらひらと揺れるので、まるでおとぎ話の天女の舞を見ているようである。
木の枝の「また」の部分に、スギやヒノキの樹皮を用い、外側にコケ類とクモの糸を絡ませて深いカップ状の巣を作る。学園では、パイプオルガンのバックミュージシャンとして鳴くこともあった。8月になると学内農場の水田わきに営巣していたが、30年以上もご無沙汰になってしまった。
(農学部教授 田淵俊人)
『全人』2024年7/8月号(No.895)より
サンコウチョウ(三光鳥)
学名:Terpsiphone atrocaudata
カササギヒタキ科サンコウチョウ属
夏鳥として本州中部以南に渡来する。冬季は東南アジアで越冬。雄は体長約45cm、雌は約17cm。属名はterps(目や耳を喜ばせる)とphone(声)で“大変よい声”というギリシャ語に由来。種小名はatro(黒)とcaudatus(尾の)で“黒い尾”を意味する。静岡県に多く、地元プロサッカーチームのエンブレムになっている