イチモンジカメノコハムシ

亀の甲羅のような、陣笠のような、はたまたUFOのような、変わった形の甲虫たちがいる。その数は6千種超。カメノコハムシと総称される彼らはなぜこれほど変わった形をしているのか、学園内に生息するイチモンジカメノコハムシを例にその秘密を紹介したい。
亀の甲羅のような見た目は、成虫胸部(前胸)の背面側と前翅(鞘翅)の「縁」が平らに伸長したことによるものだ。これを扁平縁と呼ぶ。カニグモやサシガメなどの捕食者が近づくと、イチモンジカメノコハムシは扁平縁の中に頭や触角、脚をすっぽりとしまって「防御体勢」をとる。こうすることで、捕食者から見つかるのを防ぐことに加え、物理的な攻撃を防ぐ効果を発揮する。この特徴的な形は防御への特殊化というわけだ。
捕食者からの防御が必要なのは成虫の時だけではない。卵から孵った幼虫は5回の脱皮を経て蛹になり、成虫になるが、幼虫や蛹の時には自身の糞と脱皮殻を背負う。そしてアリなどの捕食者が近づくと、これを振り回して撃退する。このように、カメノコハムシ類は幼虫期と成虫期で2つの特殊戦略を使い分ける防御の達人なのだ。
(農学部教授 宮崎智史)
『全人』2025年3月号(No.902)より
イチモンジカメノコハムシ
学名:Thlaspida biramosa
ハムシ科
体長7.8〜8.5㎜。本州から沖縄まで広く分布する。幼虫から成虫に至るまでムラサキシキブやヤブムラサキという植物(ともにシソ科)を食草として利用する。卵もこれらの植物上に産み付けられる

