ツツハナバチ
ツツハナバチのメス成虫。葦や篠竹のほか、甲虫などが朽ち木に作ったトンネルなどにも営巣する学内に葦や篠竹の筒を置いておくと、さまざまな蜂が営巣する。ツツハナバチはその中の一種だ。
春先に出現したメス成虫はオスと交尾をした後、すぐに営巣を始める。ミツバチなど集団で暮らす蜂と違、1匹のメスが自分専用の巣を作り、単独で生活する。メスは筒の中に、泥壁で仕切った小さな部屋を5〜20個ほど作り、その中に蜜と花粉を運び込んで卵を一つずつ産んでいく。最後には筒の入り口を泥壁で塞いで飛び去り、孵化した幼虫は遺された蜜と花粉を食べて成虫になる。
この蜂は、あまり選り好みなくさまざまな花を訪れると考えられていたが、最近の研究により、主にカシ類などの風媒花から花粉を集めていることが明らかになってきた。
風媒花は、花粉を風で飛ばして授粉する花である。昆虫に訪れてもらう必要がないので、それらを呼び寄せるための蜜も出さず、一般的に蜂には人気がない。ツツハナバチは、蜜は他の花から集めるものの、他の蜂が行かない風媒花の花粉を利用することで競合を避けているようだ。まさにニッチをうまく利用して生きている蜂なのである。
(学術研究所教授 原野健一)
『全人』2025年11月号(No.909)より
ツツハナバチ(筒花蜂)
学名:Osmia taurus Smith
ハキリバチ科ツツハナバチ属
北海道、本州、四国、九州、対馬に分布する。体長はメス10-13㎜、オス8-12㎜。雌雄ともに黒く、やや金属光沢を帯びる。学内では4月半ばに成虫が出現し、1カ月ほど活動する
巣へ花粉を運びこむメス。メスの腹部下面には花粉を運ぶための毛が密生している
葦筒に作られた巣の内部。泥壁で仕切られた小部屋の中に、蜜を混ぜ込んだ花粉と卵がある