アカハライモリ
上から見ると土の色に溶け込んでいるが(右上)、裏返すと赤い腹がとても目立つ。南さつまキャンパス・久志晴耕塾近くの池で採集した個体夜、家の壁に貼り付いているのはハ虫類のヤモリ。漢字で「家守」と書く。一方、イモリは「井守」と書き、水辺から離れられない両生類の仲間だ。名前や姿は似ていても、指の数や皮膚の構造が異なり、両者はまったく別の生き物である。昆虫のアリ(ハチの仲間)とシロアリ(ゴキブリの仲間)よりも違う。
〝アカハラ〞とは赤い腹のこと。鮮やかな赤色は毒があることを知らせる警告色だ。両生類の中でもっとも有名なのが、中南米のヤドクガエル。とても鮮やかで美しいカエルだが、皮膚には人の命を奪うほどの強力な神経毒がある。アカハライモリも、フグと同じテトロドトキシンという毒をもつ。決して侮れない存在だ。
だが、毒以上に注目すべきは驚異的な再生力である。ちぎれた手足や尾は数カ月で元どおりになる。眼のレンズを失っても、周囲の虹彩から再びつくられる。さらには、心臓や脳の一部までもが再生されるという。これほどの能力は、同じ両生類でもカエルには見られず、ましてやヒトには備わっていない。アカハライモリの体には、再生医療の未来を切り拓く鍵が隠されているのだ。
(農学部教授 有泉高史)
『全人』2026年7/8月号(No.917)より
アカハライモリ(赤腹井守)
学名:Cynops pyrrhogaster
イモリ科イモリ属
北海道および南西諸島(奄美大島以南)を除く日本各地の水田、ため池、湿地に広く分布する。オスはメスの行く手をふさぐようにして近づき、鮮やかな紫色の婚姻色に染まった尾をメスの鼻先で小刻みに振るという、独特の求愛行動を見せる
写真上: イモリの幼生。枝状のえら(外鰓・がいさい)が発達しており、その姿はウーパールーパーにそっくりだ 写真右: 前足が再生する様子。切断部の組織が特徴を失い(脱分化)、手首や指を再び作り出していく
