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コクサギ

写真大: 明るい方に葉を広げるコクサギ(箱根自然観察林にて)
写真小:成熟過程の果実(左)と完熟して弾けた果実(右)

大学がコロナ禍対応に追われていた2020年、オンデマンド教材作成のため農学部農学科林学研究室出身の南佳典先生、山﨑旬先生と訪れた箱根自然観察林。次々と出てくる植物知識に、時間を忘れて歩き続けた。とはいえ、急峻な斜面を歩きながら、息を殺してカメラを回すのは疲れる。そんな私を癒してくれた植物の一つがコクサギ(小臭木)だ。名前の由来は臭気があること。しかし、勧められるまま葉を揉んでみると、漂ってきたのは不快どころか、タイカレーを思わせるエスニックな良い香り。その後は出会うたびに葉をちぎり、元気をもらった。
コクサギはミカン科の植物で、タイカレーに使われるコブミカンも同じ科である。香りは葉に点在する油点に蓄えられている。正体が気になり成分を調べてみると、両者の主要成分は異なっていた。人の鼻はごく微量の香気成分にも敏感であるため、わずかに含まれる共通成分による印象なのだろう。エスニック料理が日本で親しまれるようになったのはつい最近だ。植物の魅力は時代とともに変わる。だからこそ、名前や図鑑だけでは分からない植物の魅力を探しにいきたくなるのだ。

(農学部教授 上原 歩)
『全人』2026年9月号(No.918)より

コクサギ(小臭木)

学名:Orixa japonica Thunb.
ミカン科コクサギ属

高さ1~5m程の落葉低木。やや湿った林内や沢沿いに生育する。葉は枝の左右に2 枚ずつつく特殊な互生で、「コクサギ型葉序」と呼ばれる。果実は3 、4 個の分果からなり、熟すと木質の内果皮がバネのように働いて種子を勢いよく弾き出す。香り以外も特色の多い植物である

左右交互に2枚づつ葉をつけるコクサギ型葉序(学内にて)
葉の拡大写真。白い粒々は油点で、香り成分が蓄えられている

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