史料は語る 39
「特權は同時に義務である」
小原國芳手稿
原稿用紙裏(部分)
時期不詳
縦25.3×横35.7㎝

玉川学園開校以来、小原國芳は幼小中高各部や大学の入学式にて祝辞を述べ、その内容を機関誌に掲載してきた。戦前の旧制中等学校、戦後の大学の入学式では「特權は同時に義務である」とたびたび話している。
「お目出度とう! 中學校に女學校に入學した得た諸君の喜びに滿ちた顏を見ると、ホントに若き日の希望、輝き、生命が私にまで感ぜられてうれしくてたまらない……とにかく、諸君は、數多い中から選ばれて、中等敎育を受け得るその特權は同時に……より高き義務が諸君に加へられて居ることを悟らねばならない。特権は實に同時に義務である」(『敎育日本』昭和10年6月号)
本史料はメモだが、左から3行目に「特権と同時にギム」とある。
1935(昭和)年頃の我が国の中学への進学率は20パーセント(『日本の教育統計』)に達していない。大学への進学率が20パーセントを越えたのは、初めての東京オリンピックが行われた64(昭和39)年以降になってからだ。経済的事情などで進学を断念した人々が大勢いたからである。
小原自身も父親が金山経営に失敗し極貧の少年時代を過ごし、旧制中学の受験すらもできなかった。そのときの悔しさについて涙を拭きつつ話す姿を覚えている卒業生もいるだろう。
「恩惠は同時に感謝となり奉仕となり犠牲とならなければならない……この第一日を勇敢に非常な決心もて出發しようではないか」という呼びかけで祝辞は締めくくられている。
白柳弘幸 学術研究所 特別研究員
Privileges and Obligations
In his entrance ceremony speech, Kuniyoshi often talked about privileges that Tamagawa students had at a time when only twenty percent of Japanese people could receive secondary education. He then referred to their obligations to become diligent and committed students.
In closing, he always encouraged new students by saying, “We should appreciate the privileges we benefit from and aim to become people who are willing to dedicate themselves or even make sacrifices for a better tomorrow. So let us celebrate your gathering courage and taking a step forward.”
Kazuhito Obara
President, Vice CEO, Associate Head of School
English version finalized in collaboration with
Paul McBride
Director, Center for English as a Lingua Franca (CELF)
『全人』2026年4月号(No.914)より