故きを温ねて 46
神なき知育は知恵ある悪魔をつくることなり
大学8号館(工学部校舎)玄関左側に「神なき知育は知恵ある悪魔をつくることなり」と小原國芳揮毫の碑が置かれた。1966年のことである。
この碑文をガリレオ・ガリレイの言葉であると小原から聞いた方もおられるだろう。しかし、ガリレオの著作物にそうした言葉はない。小原の『眞人の言葉』(昭和10年発行)に、ウェリントンの言葉として「宗敎なき敎育はたゞ悧巧なる惡魔を造るなり」とあり“Educate men without religion, and make them but clever devils.”と英文も載る。
碑文はこの言葉をアレンジした小原國芳の金言としてよいだろう。ウェリントンはナポレオンとのワーテルローの戦いで勝利した英国貴族であった。
碑が設置された2年後の2月、特撮テレビ映画『ウルトラセブン』「空間X脱出」(第18話)が放映された。当時大きな話題となったこの劇中、地球侵略をねらう宇宙人から地球を守るキリヤマ隊長が「神なき知育は、知恵ある悪魔をつくることなり。どんなに優れた科学力を持っていても、奴は悪魔でしかない」と部下に語るシーンがある。
脚本を書いたのは円谷プロダクション所属の金城哲夫で、本学文学部教育学科1961年度の卒業生。小原の話を覚えていたか、碑文を見ていたのであろう。 昨今、科学研究と軍事研究の関わりが論議されている。日露戦争、第一次・第二次世界大戦を経験した小原が存命であれば何と獅子吼するだろうか。
(文=白柳弘幸 教育博物館)
『全人』2017年6月号(No.817)より