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玉川のモットー

2014.03.26

「人生の最も苦しい いやな 辛い 損な場面を 真っ先きに 微笑を以って担当せよ」

玉川学園の正門のところに、ひときわ目を引く石碑がある。玉川池の畔に立つこの石碑に書かれているのが、玉川学園のモットーである。

 人生の最も苦しい いやな
 辛い 損な場面を
 真っ先きに微笑を以って
 担当せよ

このモットーのルーツは、1929(昭和4)年6月に玉川学園の初めての機関誌として刊行された「学園日記」創刊号にさかのぼる。ここに小原國芳自身によって「喜んで、困難を友としてよ 微笑みを以つて辛苦を迎えてよ…最も苦労の多い場面を眞先に選んでよ」と書かれている。
この一文が冒頭の玉川のモットーとなり、1962(昭和37)年9月に玉川学園正門の石碑に書かれるまでには、いくらかの変遷があった。
たとえば1929(昭和4)年頃には小原が「ピラミッドの土台石になれ」「北風に向かって口笛を吹け」と語り、それが初代のモットーになったと指田太郎氏が語っている。同年に発行された「学園日記 創刊号」内の「少年たちに告ぐ」の冒頭には、この「ピラミッドの土台石」の話が出てくる。小原はこの中で次のように書いている。
 

「『砂上の家』というが、基礎のない家はダメに決まっている。同様に、国家も社会も、学校も工場も、軍隊も銀行も…。至る所が、隠れたる己を犠牲にして、ミッシリ働いている巨岩が土台になければダメである。そうだ、諸君の一人ひとりに、己が向かう社会の捨て石になってもらいたいのだ。ピラミッドの土台石になって貰いたいのだ。
 地位だ、勲章だ、月給だ、評判だ、肩書きだ…、さらに
卒業証書だ、メダルだ、カップだ、優勝旗だと人間が欲しがる気持ちは分かる。しかし、それらが何だ! それは全く形骸じゃないか。影じゃないか。
 時計の長針となり短針となることは誰も欲しよう。しかも、何人にも認められないところにーーしかも窮屈な、暗い、油くさい、むさ苦しいところにゼンマイはコツコツと規則正しく、何人にも認められざるに黙々と働いていることを考えなければならない」。
そしてこの文章の末尾に、「喜んで、困難を友としてよ、微笑を以て辛苦を迎えてよ」とあるのである。
小原は、自身の教育の原初から、知識のみを持って社会に貢献するのではなく、自ら困難な場所へと敢えて入っていき、額に汗しながら世の中のために貢献できるような人材を育てたいと思っていたのだ。労作が欠かせない玉川の丘での学校生活は、まさにそうした教育の具現化であろう。
1939(昭和14)年の玉川塾専門部の教育目標の文中には、以下のような一文もある。
 「ややもすれば、高等教育を受けた者は嫌な場面、損な場面、あるいは辛い仕事、苦しい仕事を避けようとしますが、そうした場面なり、仕事なりを真っ先にしかも、その顔には微笑さえ浮かべて担当し得る第二里行者の養成に努めたい」。
第二里行者とは、玉川学園の教育12信条にも出てくるが、マタイ伝に「人もし汝に一里の苦役を強いなば彼と共に二里行け」という一節から取られている。最初の一里は命じられるままに歩いたとしても、次の一里は自分の意思で歩くこと、つまり誇りを持って物事にあたることが重要であるという意味である。

このように小原國芳の生き方に対する想いや玉川学園が理想とする人物像は、時代によってさまざまな言葉を借りて表現されてきた。そしてそれが一つに収斂されたのが、冒頭のモットーなのである。玉川学園の正門は、学園で学ぶほとんどの生徒が朝に夕に通る場所である。今日も、そしてこれからも、玉川のモットーはこの場所で生徒たちの成長を見守っているに違いない。

ちなみに余談ではあるが、1962(昭和37)年にこの石碑が建立された際、モットーの一文は現在の白大理石ではなく黒御影石に刻まれていた。ところがこの石だと刻まれた文字が遠くから読みにくいことが設置後に分かった。そこで再度工事が行われ、現在の白大理石に替えられたという。従来の黒御影石の石碑は、旧高等部校舎中央玄関右側に置かれていたが、校舎の解体工事に伴い、高学年校舎へと行く道と農学部へ行く道の分岐点のところに移設され、「真・善・美・聖・健・富」のモニュメントと共に玉川学園の教育理念と実践目標を学生や生徒たちに伝えている。



参考文献
小原國芳『玉川塾の教育』 玉川学園出版部 1930
小原國芳編『学園日記』創刊号 玉川學園出版部 1929

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