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自由研究

2017.10.23

知識に基づいた個性と自主性を育む「自由研究」

自学自律と「自由研究」

玉川学園の「自由研究」は、創立者小原國芳の提唱した“自学自律”を具現化した教育であると言える。玉川学園では、労作の中で各自が創意工夫をし、試行錯誤をしつつ主体的に取り組んでいくことを小学部・中学部・高等部で開校以来大切に実施している。
小学部では、創造性を伸ばし、個性を伸長させ、自主的・実践的な態度を養う。
中学部では、各自の研究課題に対して、主体的に目標に迫って行く、真の学習活動が生徒に要求され、研究のテーマや研究方法・工夫は個人の創意を重視している。
高等部では、主体的創造的学習とし、教科学習で派生した疑問を学問的研究まで高めることを求め、その自学の実践は、一教科の領域に留まらない学際的研究ともなっている。
このような目標で始まった自由研究では、児童、生徒たちが主体性を持ち研究を進行して、研究成果の発表まで行うことが求められる。研究の進度により学際的に研究を進めること、将来の高等教育での学修素地を同時に身につけることにも繋がる効果も見込まれている。

自由研究のテーマ

玉川学園の自由研究は、「自学自律」の精神のもと、さまざまな分野から自発的に自分の研究テーマに取り組む探究学習である。具体的には、教科学習や芸術、スポーツなどの分野から、自身の興味、関心にもとづいてテーマを決め、自発的に1年間を通して研究に取り組む。担当教員にアドバイスを受けながら自ら計画に基づき研究を進め、それぞれの研究成果を玉川学園展や学校行事、外部の大会やコンテストで発表する。1年ごとに研究分野を変更することもできるし、継続的に研究活動を行うことも可能。自由研究によって培われた自学自律の精神は、今後の学習、さらには高等教育や社会でも生かされていく。また、自分のやりたいこととして選んだテーマについて、教科学習の時間に縛られることなく、心ゆくまで行えることによって、学校生活がさらに楽しくなるといったことにも繋がる。
小学部、中学部、高等部時代に取り組んだ自由研究テーマを、生涯にわたっての関心事として調べ続け、学び続けている人たちも少なくないようである。

5年生(小学5年生)~ 8年生(中学2年生)の研究分野(2017年度)

習字 国語表現 社会(地歴公民・考古学) 算数・数学
統計 物理 生物(園芸・サンゴ) 化学
天文 英語劇 英語研究 調理
写真 情報 吹奏楽 作曲
弦楽 ハンドベル スポーツ科学 体操
茶道 平面図形 立体造形(彫刻) 立体造形(陶芸)
工作 手芸 ムーブメント 放送舞台技術

9年生(中学3年生)~ 12年生(高校3年生)の研究分野(2017年度)

外国語 文芸・放送技術 思想・文学 グローバル・スタディーズ
企業研究 歴史学 SSHリサーチ プラネタリウム番組制作
数学 ロボット サンゴ研究 フラワーデザイン
茶道 ファッション 食物 アドベンチャー
社会福祉 写真 将棋 観光学
鉄道 陶芸 ハンドベル 作編曲・楽曲
弦楽器 管打楽器 演劇 英語劇
ダンス 油絵 日本画 空間デザイン
彫刻 書道 映像表現 コンピュータグラフィックデザイン
航空機 チアダンス 武道科学 色彩・染色・染め物
ラグビー フットサル デンマーク体操 球技「野球」

自由研究の意義

玉川学園の自由研究は、創立当初より今日まで継続して行われている。特に玉川学園の12の教育信条の「全人教育」「個性尊重」「自学自律」「労作教育」と深い関わりをもっている。自由研究の意義は、作品の完成ではなく、その過程にある。度重なる困難な状況を前に試行錯誤を繰り返しながら、為すことによって学ぶことで一歩一歩前進する。そして自らの力を磨き、辛抱強く取り組むことによって、やがて完成の時を迎える。その経験が、これからの人生に大きな影響を与えていくことになるだろう。小原國芳は次のように述べている。

与えられた知識よりも自ら掴んだ知識が尊い。教え込む教師は下の下である。学ばせることのできる教師でありたい。暗記や詰込みよりも、発明、工夫の力に生命がある。分量よりも創意力である。カントは、「汝等、われより哲学を学ぶべきにあらず、哲学することを学べ」と、キビシく諭した。
ホントの学習法とは何か。燃える情熱と、ツルハシを鍛えることと、掘り方を工夫させることだと断言する。
大に考えさせ、学ばせ、工夫させ、夢を夢みさせてほしい。
「百聞は一見に如かず」という。しかも「百見は一労作に如かず」、大に試みさせ、労作させ、体得させてほしい。
近年、「生きる力」を育てることが重要視されているが、まさしく自由研究は「生きる力」を身につけることであると言える。

ヴァイオリンなどの制作

自由研究の実践例・・・ヴァイオリンの制作

『玉川学園中学部 全人教育の実践』(玉川大学出版部発行)の第5章の「創造性を高める自由研究」の項(小関祐一、多賀譲治著)に、生徒のヴァイオリンの制作について、次のような記述がある。

中学生が作ったというヴァイオリンを見たのは、今から二年前の中学部展だった。小学生の僕には何としても信じられない作品だった。本当に良い音が出るのだろうか。本当に使えるのだろうか、本当に中学生の作品ならばヴァイオリンに挑戦してみよう!その日の僕の頭の中はヴァイオリンに全く占領されていた。
桜の門をくぐって、いよいよ玉川っ子の仲間入り。ヴァイオリンを作るべき木と対面した時は、思わず木をなでてしまった。暖かみと、「やってくれ!」という木の心が僕に伝わって来た。初めにネック、そして、側板、次に表版と裏版、それぞれを取り付けて、それから、指板やテルピースや、糸巻などを作り、色を塗ってできあがり。どの部分もそれぞれ思うようにいかず苦しんだが、表版と裏版そして色の塗り方で音が良くも悪くもなるという事を知り、それはどうしたら良いのかと本屋や楽器店を歩き資料を集めた。だが、これで良いと納得できるものは無かった。やはり人真似だけではだめなのだ。僕のものを作りださなくてはと思った。中学部展ギリギリまでかかって完成、銀賞をいただいた。
二年になり、ヴァイオリンをそのままにしておくと汚くなるので、彫刻でうずめたヴァイオリンの住まい、つまりケースを作ろうと思った。手をつける前まではケースの方が簡単だと思っていたのに、これは大きな間違いだった。

この生徒は、ケースを作るのに、希望通りの木がみつからない、手に入れた木がねじれていたので平らにして脇の曲線部分を上下ぴったりになるように切る、きれいな曲線に切った木を一つひとつ組み合わせる、彫刻のために図案を考える、ケースに図案を書き入れ彫る、彫り終わったら一つになっているケースを中身と蓋に分けるために切る、ヤスリで磨いてなめらかにし染料を塗る、布きれでもう一度磨きをかける、ヴァイオリンの底を作る、とってや、ちょうつがい、鍵をつける、という作業を試行錯誤を繰り返しながらやり遂げた。この経験が、その後の彼の人生に何らかの影響を与えたに違いないだろう。

関連サイト

参考文献
  • 玉川学園編『玉川学園中学部 全人教育の実践』 玉川大学出版部 1979年
  • 玉川学園編『玉川学園小学部 全人教育の実践』 玉川大学出版部 1979年
  • 玉川学園編『玉川学園高等部 全人教育の実践』 玉川大学出版部 1980年
  • 玉川学園編『贈る言葉 小原國芳』 玉川大学出版部 1984年
  • 鰺坂二夫著『小原教育』 玉川大学出版部 1975年
  • 小原國芳監修『全人』第104号 玉川大学出版部 1958年
  • 小原哲郎監修『全人教育』第441号 玉川大学出版部 1985年
  • 玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園五十年史』 玉川学園 1980年

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