ラウンドスクエア
ラウンドスクエアは、世界50カ国240校以上(2023年更新)のメンバー校を有する国際的な私立学校連盟である。玉川学園は、2005(平成17)年に日本で初めて正式なメンバー校として認定され、毎年、国際会議、ジュニア会議に生徒たちを派遣している。
1.ラウンドスクエアとは

ラウンドスクエアの加盟校は、ラウンドスクエアの精神(基本理念)である"I.D.E.A.L.S."、すなわち「国際理解」、「民主主義の精神」、「環境問題に対する意識」、「冒険心」、「リーダーシップ」、「奉仕の精神」を体現するために、国際交流や奉仕活動に取り組む。それにより、国際社会で活躍できる若者を育成することを目的としている。なかでも10月に開催される高校生対象の国際会議では、加盟校の生徒たちが集まり、環境や国際問題などをテーマにしたディスカッションや研究発表、奉仕活動、アドベンチャーなどの様々な活動を行う。共通言語は英語。また、会議とは別に、開発途上国を訪れ、井戸を掘るといった地域社会のための実践的な奉仕活動であるサービスプロジェクトに取り組む。さらに4月には中学生対象のジュニア会議が開催される。
なお、会議のプログラムについては、開催校の教員が"I.D.E.A.L.S."の理念に基づいて作成するが、運営の大部分は開催校の生徒たちが行う。ラウンドスクエアの様々な活動において、生徒たちのリーダーシップが求められている。
ラウンドスクエアの基本理念である"I.D.E.A.L.S."

Internationalism | 国際理解 | |
Democracy | 民主主義の精神 | |
Environment※ | 環境問題に対する意識 | |
Adventure | 冒険心 | |
Leadership | リーダーシップ | |
Service | 奉仕の精神 |
- 現在はEnviromentalism
1966(昭和41)年、ドイツの教育者であるクルト・ハーン氏が、次世代の国際的リーダーの育成を目的として、8カ国29校から成る国際的私立学校連盟を設立。翌1967(昭和42)年、ハーン氏が設立したスコットランドのGordonstoun Schoolにおいて、第1回の国際会議が開催された。その会議をラウンドスクエアと命名した。ラウンドスクエアとは、Gordonstoun Schoolにある17世紀に建てられた円形の建物の名称であり、会議が行われた場所にちなんで名付けられた。

2.玉川学園が日本初の加盟校に
ラウンドスクエアの加盟校になるためには審査がある。審査をパスした学校だけが加盟を許可される。加盟校の中には世界的な名門大学への進学実績を誇る高校が多い。審査を受けるには、代表の生徒が国際会議においてプレゼテーションを行い、加盟校の生徒と討議し、奉仕活動に参加する。その生徒の行動が審査の対象となる。なお、ラウンドスクエアの基本理念と玉川学園の教育理念である全人教育は重なる部分が多い。
2017(平成29)年度の国際会議は、南アフリカ共和国のケープタウンにあるSt Cyprian’s Schoolで開催され10年生(高校1年生)・11年生(高校2年生)の5名が参加、ジュニア会議はニューヨークのHackley Schoolで開催され9年生(中学3年生)4名が参加し、世界各国の参加者とともにディスカッションや研究発表、ボランティア活動など有意義な活動を行った。


3.国際会議
毎年、高校生を対象にして、国際会議が開催される。本学の生徒が参加した国際会議は以下の通りである。
開催年 | 開催地 | 開催校 | 本学参加者 |
---|---|---|---|
2004 | アメリカ | Deerfield Academy | 3名 |
2005 | オーストラリア | Ivanhoe Grammar School | 5名 |
2006 | スコットランド | Gordonstoun School | 5名 |
2007 | インド | Daly College | 6名 |
2008 | カナダ | Glenlyon Norfolk School | 6名 |
2009 | インド | Mayo College | 6名 |
2010 | タイ | Regent’s International School Pattaya | 6名 |
2011 | イギリス | Wellington College | 5名 |
2012 | 南アフリカ | Penryn College | 6名 |
2013 | アメリカ | St. Andrew’s School | 6名 |
2014 | インド | Sanskaar Valley School | 5名 |
2015 | シンガポール | United World College of South East Asia | 6名 |
2016 | スイス | Aiglon College | 5名 |
2017 | 南アフリカ | St Cyprian’s School | 5名 |
2018 | カナダ | Ashbury College | 5名 |


【実施例】
2006(平成18)年の国際会議は10月7日から10月13日まで、発祥の地であるスコットランドのラウンドスクエアの中庭で開会。参加した生徒たちは、英国のアン王女やアンドリュー王子の講話を聴く機会に恵まれた。多文化交流会では、玉川太鼓と「雀踊り」を披露。寮生活を通して世界の多くの生徒たちと交流することができた。
2009(平成21)年の国際会議は10月10日から10月16日まで、インドのMayo Collegeで開催され、「無知の闇から知の光へ」をテーマに、ディスカッションや奉仕活動等が行われた。

2011(平成23)年の国際会議は10月17日、イギリスのWellington Collegeにおいてイギリス女王陛下エリザベス二世の開会宣言によって幕を開けた。会議期間中には朝8時半から夜の10時まで、講話、ディスカッション、校外での奉仕活動、広大なキャンパスの中を走るクロスカントリーなど様々なプログラムが展開された。講話では、セーブ・ザ・チルドレンのジャスミン・ホワイトブレッド理事長、21歳の時に岩登りの途中の事故で下半身不随となりながらも手こぎ自転車で日本縦断を果し、イギリス代表として2012年のパラリンピック出場を目指している(実際に出場した)カレン・ダークさん、イギリス陸上界でもっとも偉大な選手として知られているコリン・ジャクソンさんという3名のゲストスピーカーの貴重な話を聞くことができた。なお、国際会議の開会式に先駆けて、各校一人ずつの代表者が女王陛下と面会した。

2012(平成24)年の国際会議は南アフリカ共和国のPenryn Collegeで開催され、各校より5~6名の生徒が参加して、グループディスカッションや奉仕活動などを行った。写真は国際会議での「バラザ」(グループディスカッション)の様子。
4.サービスプロジェクト
国際社会を舞台に活躍できる真の国際人をめざして、国際会議とは別に、加盟校の生徒たちが開発途上国を訪れて、地域社会の支援のための実践的な奉仕活動「サービスプロジェクト」を行う。加盟校の生徒たちと一緒に行う場合と、本学独自で行う場合がある。具体的な活動例としては、孤児院やユニセフの施設などの訪問、海岸エリアでマングローブ環境保全活動参加での植樹、井戸掘り、浴衣を着て日本の文化を紹介などである。
【実施例】

2008(平成20)年には、6月17日から27日まで、本学の生徒5名が、2004(平成16)年のスマトラ沖地震によるインド洋大津波で被災したタイのピピ島の復興支援活動に参加。被災者の職業訓練などに使われるリソース・センターの建設に取り組むとともに、地域の小学生を対象に授業を行った。
2013(平成25)年、高校生5名が、タイの児童保護福祉施設における奉仕活動のため、タイ東北部の町 Nang Rong を訪問。親や世話をしてくれる近親者のいない3歳から17歳までの24名の子供たちと寝起きを共にし、様々な活動を行った。養護施設敷地内でトウモロコシの植え付け作業等の奉仕活動をするほかにも、施設の子供たちが通っている地元の小学校や高校を訪れ、日本の食事、伝統的な遊び、ソーラン節を披露するなど日本の文化をわかりやすく紹介し、子供たちと交流を深めた。サービスプロジェクトの後半は、カンボジアへ移動し、主に現地NGOによる奉仕活動の実地見学及び体験を行った。


5.ジュニア会議
毎年、中学生を対象として世界の各地域でジュニア会議が開催されている。本学はアジア・オセアニア地域に所属しているが、年によっては他の地域のジュニア会議にも参加している。なお、本学の生徒が参加したジュニア会議は以下の通りである。
開催年 | 開催地 | 開催校 | 本学参加者 |
---|---|---|---|
2006 | オーストラリア | St Philip’s School | 5名 |
2007 | シンガポール | United World College of South East Asia | 6名 |
2008 | 学事日程の関係で不参加 | ||
2009 | カナダ | Appleby College, Fern Hill School | 6名 |
2010 | カナダ | Rothesay Netherwood School | 5名 |
2011 | オーストラリア | St Philip’s College | 6名 |
2012 | カナダ | Lakefield College School | 6名 |
2013 | オーストラリア | Bunbury Cathedral Grammar School | 4名 |
2014 | ニュージーランド | King’s College | 5名 |
2015 | オーストラリア | Westminster School | 6名 |
2016 | オーストラリア | Scotch College | 5名 |
2017 | アメリカ | Hackley School | 4名 |
2018 | タイ | The Regent’s International School Bangkok | 5名 |

【実施例】
2006(平成18)年は、4月8日から6日間にわたってオーストラリアのSt Philip’s Schoolで行われた。屋外での活動では、朝の6時半からチャペルの建設を行なったり、会場近くの山野を清掃したりした。また、先住民族の移住区を訪れ、スポーツ用具を寄付して子供たちと交流した。

2011(平成23)年は4月11日から10月16日まで、オーストラリアのSt Philip’s Schoolで開催された。各国からの参加の112名が、グループディスカッションや野外活動(キャンプやカヌー)、奉仕活動などのアクティブな活動に取り組み、交流を深めた。
2018(平成30)年はタイのThe Regent’s International School Bangkokにて、本学の9年生(中学3年生)5名が参加して、4月6日から10日までの間、開催された。今回はジュニア会議でありながら、世界中のラウンドスクエア校に参加を呼びかけたため、13か国30校から、生徒175名、スタッフ42名が集った。会議期間中は、グループごとのディスカッション、野外活動、奉仕活動等を行い、ラウンドスクエアの基本理念である、"I.D.E.A.L.S."を実践した。


6.ラウンドスクエア地域校長会議を本学で開催

2016(平成28)年2月26日、27日の2日間、オーストラリア・アジア地域の校長・代表者会議が玉川学園で行われた。集まったのは、地域のメンバー校の校長や関係者など約50名。会場は大学教育棟 2014のラーニング・コモンズと朔風館。8年生(中学2年生)3名によるフルート三重奏の演奏、ラウンドスクエア諸活動に参加したことのある12年生(高校3年生)3名による英語での玉川紹介のプレゼンテーションがあり、会議がスタート。加盟校間の親睦をはかるとともに、教育理念の確認や今後の活動の検討が行われた。会議終了後には参加者が書道や茶道といった日本文化を体験した。
関連サイト
参考文献
- 小原芳明監修『全人』 玉川大学出版部
第695号(2006年)、第701号(2006年)、第702号(2007年)、
第709号(2007年)、第735号(2010年)、第745号(2010年)、
第748号(2011年)、第751号(2011年)、第757号(2012年)、
第774号(2013年)、第787号(2014年)、第795号(2015年)、
第805号(2016年)