屋内温水プール
屋内温水プールの完成当時、日本に50mの屋内プールは、千駄ヶ谷の東京体育館と代々木のオリンピックプールがある程度。しかも玉川学園のプールは温水。日本水泳連盟の公認プールとして認められ、鈴木大地氏やジャネット・エバンス氏など金メダリストも視察や練習のために来園。水泳世界選手権の最終選考会場としても使用された。
1.最新の設備を備えた屋内温水プール
1972(昭和47)年、玉川学園創立40周年記念事業として、屋内50mプール(縦50m、横15m)が完成。7月1日、落成式が行われた。
当時、日本に50mの屋内プールは、千駄ヶ谷の東京体育館と代々木のオリンピックプールがある程度。温水プールということもあり一年中使用することが可能で、しかも最新の設備を備えていたため、日本水泳界からも大きな注目を集めた。そして、日本水泳連盟の公認プールとして認められ、水泳世界選手権の最終選考会場としても使用された。
どのような最新の設備を備えていたのか、その詳細を以下にまとめてみた。
- ①水中監視窓と水中音波伝達装置
- 選手の泳ぎをチェックできる水中監視窓と 水中音波伝達装置を使って、水中の動きを直接泳者に伝え、その場で指導を行うことができる。
- ②水中照明装置
- 安全を保つために設置し、授業でも活用している。
- ③指導用移動式ブリッジ
- 上から泳ぎのフォームを確認しながら指導することが可能。また、ブリッジを自由に移動することが可能なため、受講者数によって利用面積を変えて指導を行うことができる。
- ④プールフロアー(水深の変更が可能)
- 幼稚園児や小学生、泳げない者のために、深水120cmを80cmや40cmに変更することができる。
- ⑤横のコースロープ
- 縦のコースロープのほか、2m間隔で横方向にロープが張れるよう設計、より多人数での同時授業が可能。この横コースロープのおかげで、子供たちが横方向(15m)にも泳げる。また目的に合わせて自由に区切って使うことができる。
- ⑥広いプールサイド
- プールサイドは幅7mと広く、多角的に使用が可能である。
- ⑦プール管理のオートメーション化
- 安全と衛生を保つために、浄化、換気等はすべてオートメーションにより管理されている。
- ⑧浄水機の設置
- 災害時に飲料水として利用できる1050t対応の浄水機を設置している。
- ⑨水深は120cmから160cm
- 日本の学校では、水深90cm~120cmくらいの浅く型にはまったプールが設置されている。実は諸外国ではもっと深いプールが設置されている。本学のプールも深くつくられている。これは、水難事故に遭った際にも対応が可能なよう安全教育としての水泳指導ができるようにと考えられているからである。
今から約50年も前に、何故これほどの設備を備えた屋内プールをつくったのか。その理由として、玉川学園創立者の小原國芳が「世界に類がない一流のプールをつくりたい」と考えていたことが挙げられる。また、一説には日本水泳連盟公認のプールよりも大きいプールをと、長さ51mのプールを構想していたという話もある。
2.授業での使用
屋内温水プールということもあり、幼稚部から大学までの授業でフルシーズン使用している。水泳の授業ではクロールや平泳ぎといった泳法を学ぶことも重要だが、本学ではさまざまな水中運動を体験させることにより、自己保全能力を高めるといった安全教育としての水泳に関する教育にも力を入れている。その中でも、特に重要視しているのが着衣泳。水難事故は水泳中に起こるとは限らない。むしろ衣服を着たまま川や海に落ちるケースの方が事故に繋がりやすい。そのため着衣泳を経験しておくことは、自らの命を守るためにとても大切なことなのである。
また、授業とは別に、プール完成当初から水泳教室を開催している。水泳教室では、足の着かないところや流れのあるところでも安全に泳げるようになることを目的に、泳力検定という玉川学園独自の判定基準を設定。具体的には、クロールや平泳ぎなどの能力だけではなく、立泳ぎ、横泳ぎ、潜水、飛び込みといった競泳種目以外の水泳能力も評価の対象にして、1年生(小学1年生)から12年生(高校3年生)まで各学年で目標とする級を設けた。
3.オリンピック金メダリストが視察や練習で使用
最新の設備を備えた屋内温水プールを視察に、さまざまな学校・施設などから見学者が訪れた。さらにミュンヘンオリンピック(1972年)金メダリストのジョン・ヘンケン氏、田口信教氏(鹿屋体育大学名誉教授)、ソウルオリンピック(1988年)金メダリストのジャネット・エバンス氏、鈴木大地氏(元スポーツ庁長官、元日本水泳連盟会長)も視察や練習のために来園。特に、鈴木大地氏は1995(平成7)年11月30日に、本学学生の水泳指導のために来園し、その際、得意のバサロ泳法も披露。学生たちにとっては「ホンモノに触れる」、よい機会となった。
関連サイト
参考文献
- 小原國芳監修『全人教育』第276号 玉川大学出版部 1972年
- 小原哲郎監修『全人教育』第572号 玉川大学出版部 1996年
- 玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園五十年史』 玉川学園 1980年