玉川学園カナダナナイモ校地の歴史 ⑤ ナナイモ校地の施設
ナナイモ校地の主な施設は、本部棟、学生棟、そしてマラスピナ・玉川ホールと呼ばれる多目的ログハウスの3棟。さらに、中規模温室や農業機械用の倉庫等もあり、農学部の卒業研究などで日本の温室栽培技術を利用した日本野菜の生産を中心に研究・活動を続けてきた。本部棟の裏手にはホールデン湖が広がり、カヌーを使った研修の場として利用されている。
1.ナナイモ校地の開設時の施設
1976(昭和51)年9月1日にナナイモ校地の開設披露式が行われた。当時、ナナイモ校地には、前所有者のロックナー氏が住んでいた建物(ログハウス)や納屋、倉庫がそのまま残っていた。ログハウスは、四角く面取りした極太のログを、基本的に釘を使わずに組み上げた築140年を経過した建物で、「ホワイトハウス」という通称で親しまれていた。ログハウスは左右に分かれた二世帯住宅になっていた。片側は老朽化で使用できない状態。利用可能なロックナー氏が生活していた側を、1階は共有スペース、2階は宿泊スペースとして使用。共有スペースには事務室、食堂、トイレ、浴室、洗濯室があった。トイレはすでに水洗トイレ。食堂や洗濯室にある蛇口は2つずつあり、一方からはお湯が出た。それらを活用してナナイモ校地での活動が開始された。
1977(昭和52)年、玉川大学のクラブである海外協力研究部の学生たちがナナイモ校地を訪れ、ログハウスのペンキ塗り、湖の桟橋や道作りなどの労作を行った。
2.本部棟、学生棟、新ログハウス「マラスピナ・玉川ホール」の建設
1989(平成元)年、老朽化が激しかった納屋を解体することとなった。そして、納屋を解体した場所および周辺に、本部棟(754m2)および学生棟(358m2)を建設。さらに牧草地の一角に新しい倉庫、大型ビニール温室、井戸および井戸ポンプ小屋を設置した。学生棟は1階が10室、談話室もあり、2階は物置で3室。
翌1990(平成2)年には、道路を隔てた正門の向かい側の土地(D地区)と建物(Dハウス)を取得した。一時期は駐在員の宿舎として使っていた。また、学生・生徒の人数が多く学生棟に泊まり切れない場合には、宿泊棟として使用。2001(平成13)年には改修工事を行った。やがて使用頻度が減り、維持管理にも苦労するようになったため、2013(平成25)年3月に売却することとなった。
1996(平成8)年には、築140年を経過したログハウスを解体。1999(平成11)年に新たなログハウス「マラスビナ・玉川ホール」と校地正門が完成。2001(平成13)年には学生棟の改修工事を行った。2003(平成15)年には第二井戸および井戸ポンプ小屋を設置。
3.現在の施設
イ.本部棟
本部棟1階にはクラスルーム、レイクルームと呼ばれる教室、そしてダイニングルーム、事務室、キッチンがある。日本・カナダ関連の書籍が充実しているクラスルーム、ホールデン湖が一望出来るレイクルームは研修で使われるだけでなく、地元団体も利用することができる。2017(平成29)年度、本学園のIBクラスと現地サミット校の生徒、合計100名ほどが、このレイクルームを使用してワークショップを行った。2階は引率教員や出張の教職員などが宿泊できる部屋として、2人部屋が1つと1人部屋が3つの合計4つの部屋が設置されている。
ロ.学生棟
1989(平成元)年、本部棟とともに2階建ての学生棟が完成。1階が10室と談話室、2階は物置で3室。さらに8年生のカナダプログラムを、ナナイモ校地を中心として行うこととなり、宿泊者の許容人数を増やすため、2001(平成13)年に学生棟の改修を行った。1階の1人用の10室を2人用に、2階の物置を宿泊室6室に改修。10人だった収容人数が32人になり、翌年より8年生の新カナダプログラムがスタートした。
各階には洗濯機2台、乾燥機2台が設置され、シャワールーム、トイレも完備している。暖房設備は完備してあり、また1階は車椅子でのアクセスも可能となっている。プログラム中に学生や生徒が学生棟に宿泊する場合、現地スタッフまたは玉川学園から引率でグループに同行する先生方が、学生と共にこの学生棟に宿泊することになっている。
ハ.マラスピナ・玉川ホール(ログハウス)
新たなログハウスは、1999(平成11)年にマラスピナ大学から大学演習林産の木材の寄贈を受けて建てられた。このログハウスは「マラスビナ・玉川ホール」と呼ばれ、多目的教室として使用される。「マラスビナ・玉川ホール」という名称は、これまで20年に亘って友好関係を深めてきたマラスピナ大学との今後の協力・発展を願ってつけられた。地元、マラスピナ大学の研究林から産出されたシーダー材を使用したログハウスは、室内の温度が夏は涼しく冬は暖かく保たれるのが特徴。床面積約280m2の多目的ホールは、各種講義、ミーティング、ワークショップなど、さまざまな活動に利用されている。また、ネットワーク設備も完備しており、本学の学内ネットワークへの接続も可能で、日本-カナダ間でのインターネット会議も行える。建物横のデッキからは、目の前にホールデン湖、その東側には湿原が広がる。一般への貸し出しも行っており、地元大学関係者のワークショップなどの利用がある。約100名の人数が一度に利用することができるほど、室内が広いことが特徴である。
ニ.農場
校地購入後、校地の正確な測量、土壌調査、植生調査、気象観測などが実施され、農場開発のための基礎的調査が地道に行われてきた。またナナイモ校地内の環境整備にもかなりの時間を割いた。家屋、家具、機械類などの整備・修理、校地内の庭や花壇、遊歩道、湖の桟橋の補修、樹木の伐採・剪定など細かいことをあげれば限りがない。
またこの土地でどんな作物が栽培可能かの基礎的調査も実施。その一つとして日本野菜を栽培して、適応性、生産性などの試験を行った。キュウリ、トマト、ナスなど8種類にもおよぶ野菜とキノコなどを試作して、その特性を記録・整理。キュウリなどいくつかの作物がこの地でも栽培可能であることが確認できた。特に日本のキュウリは、現地の人たちに大変評判がよい。また校地には林地や牧草地があり、これも調査対象としてきた。
大型温室の完成、ビニールハウスの増設などにより、研究施設環境の充実が図られてきたが、現在は農学部からの駐在員も常駐しておらず、卒業研究で滞在する学生もいなくなり、農場はもちろんのこと温室、ビニールハウスも使用されていない。
関連サイト
参考文献
- 農学部60周年記念誌『教職員と学生たち~昨日・今日・明日~』 玉川大学農学部 2013 年
- 片岡勝美「国際教育の新しい礎に―カナダ・ナナイモ校地研究施設落成―」(『全人教育』第500号 玉川大学出版部 1990年 に所収)
- 江里口完道「ナナイモ校地ログハウス竣工式」(『全人教育』第613号 玉川大学出版部 1999年 に所収)
- 玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園五十年史』 玉川学園 1980年
- 玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園五十年史(写真編)』 玉川学園 1980年