岡田陽
岡田陽は玉川学園中学部長、高等部長、玉川大学文学部教育学科・芸術学科担当部長を歴任。また学校劇、演劇教育の専門家として活躍。1948(昭和23)年、日本児童文化協会主催の学校劇コンクールにおいて、岡田作の『新しい友達』が文部大臣賞を受賞。2004(平成16年)年には日本児童演劇協会賞を受賞。玉川学園演劇・舞踊団を率いて、メキシコ・アメリカ公演、ヨーロッパ公演、アメリカ・カナダ公演、イギリス公演など日本のみならず海外でも公演活動を展開した。
岡田陽(おかだあきら)は1923(大正12)年3月11日に陸軍中将岡田資と温子の長男として鳥取県で生まれた。1940(昭和15)年、17歳のときに玉川学園専門部に編入学。1943(昭和18年)年に玉川学園内に設立された興亜工業大学(現在の千葉工業大学)に入学。2年で中退し、陸軍特別操縦見習士官に志願。終戦までフィリピン、台湾等の航空隊に入隊。復員後、1946(昭和21)年、玉川学園小学部に勤務。岡田は、学校劇の名付けの親である玉川学園創立者小原國芳の著書『学校劇論』に感銘を受け、学校劇運動に興味を持つ。そして日本における学校劇運動の先達として学校劇を日本全国に広めた小原の思いを継承し、玉川学園においての学校劇を推進し着実な成果をあげていった。翌々年には、玉川学園中学部教員となる。その年、日本児童文化協会主催の学校劇コンクールにおいて、岡田作で小学部上演の『新しい友達』が文部大臣賞を受賞。

1948(昭和23)年、小原國芳の次女純子と結婚。純子は玉川学園で舞踊・リトミックの教育者として活動。岡田は1951(昭和26)年、玉川学園中学部長に就任。翌年の4月、「玉川学校劇集」の中の自作『すずらんの鐘』が映画化され、公開された。映画の舞台は本学キャンパスで、玉川学園の生徒も出演した。


1952(昭和27)年の第1回「玉川の集い」(玉川学園芸能教育発表会)において、岡田作・演出の『塾の四季』が上演された。以降1963(昭和38)年までの間に『思うようにならない劇』、『ピーターパン』、『王子と乞食』、『青い鳥』、『金時計』、『ガリレオ・ガリレイの生涯』、『地球光りなさい』等の演出を手掛けた。1953(昭和28)年、岡田作で生徒出演の『ぼくらの学園日記』がラジオ東京にて3か月連続で放送された。1956(昭和31)年8月7日、NHKテレビの学校放送の時間に、岡田作・演出、玉川学園生出演の『ノーベル兄弟』が全国放送された。










1961(昭和36)年、玉川大学文学部講師に就任し、中学部長と大学教員を兼務。同年、副団長および公演の総監督として玉川学園メキシコ親善使節団を率いて、メキシコ・アメリカにて公演。

玉川学園小学生~大学生等40人が参加

1964(昭和39)年、玉川大学文学部助教授に昇格、中学部長と兼務。同年、文学部の中に芸術学科を増設することになり、その設置に尽力。またこの年、ロンドンで開催の国際児童演劇会議に日本代表団のメンバーとして参加。以後7か月にわたりイギリスを中心に欧米諸国を視察。1968(昭和43)年、玉川大学演劇舞踊団を率いてヨーロッパ公演。


パウロ六世教皇に特別に謁見
1969(昭和44)年、玉川大学文学部教授に昇格、中学部長と兼務。1972(昭和47)年、玉川学園高等部長に就任、大学教員と兼務。同年、玉川学園舞踊団を率いてギリシャにて公演。1975(昭和50)年、厚生省中央児童福祉審議会文化財部会委員に、翌々年には同審議会の舞台芸術部会長に就く。1978(昭和53)年、玉川大学文学部教育学科・芸術学科担当部長に就任。同年、玉川大学舞踊合唱団を率いてアメリカ、カナダにて公演。




1980(昭和55)年、玉川大学大学院文学研究科教育学専攻担当科長に就任。同年、全米演劇協会会議に出席。翌年、玉川大学演劇舞踊団を率いてイギリス公演。1983(昭和58)年、日本児童演劇協会相談役に就任。


1989(平成元)年、「グループD.I.L(Drama in Life)」を設立し、全国各地において公演活動を展開。翌年、日本児童演劇協会に落合聰三郎児童青少年演劇基金が設立され、その運営委員に就任。1997(平成9)年、玉川大学名誉教授の称号が授与された。2004(平成16)年に日本児童演劇協会賞を受賞。学校劇脚本を多数執筆し、以下に記述する演劇教育論・表現方法を海外から日本の教育機関等へ紹介し、演劇関係の教育者や俳優を育成したことへの貢献に対しての受賞であった。2009(平成21)年11月26日に逝去。享年86歳。同年12月19日、玉川大学大体育館において、追悼礼拝が行われた。


岡田は生涯を通して、学校劇の創作と実演のほか、クリエイティブ・ドラマ、ムーブメント、参加劇、朗読劇、高齢者ドラマといった新たな演劇教育論・表現方法の日本の教育機関等への紹介、劇あそびや表現遊びの推進などに力を注いだ。岡田は常々芸術教育について、つぎのように語っている。
芸術教育とは、単なる芸術への教育にとどまらず、芸術によって獲得された活き活きと豊かな人間感性が、全人格全生活にエネルギーとして働く力を育てることでなければならぬ。
岡田陽著「演劇教育の位置」(『全人教育』第321号に所収)より
岡田は「岡ちゃん」と呼ばれ、教職員、学生、生徒たちから慕われた。


1969(昭和44)年

1959(昭和34)年

1960(昭和35)年

1960(昭和35)年

1962(昭和37)年

1964(昭和39)年

『ウィルヘルム・テル』の稽古での指導
1965(昭和40)年

1968(昭和43)年

1968(昭和43)年

劇『青い鳥』の稽古での指導
1969(昭和44)年

1970(昭和45)年

1972(昭和47)年

1973(昭和48)年
参考 岡田の主な著書等
書名 | 出版社 | 発行年 |
---|---|---|
アンデルセン(『玉川こども百科』) | 誠文堂新光社 | 1953 |
日本童話(『玉川こども百科』) | 誠文堂新光社 | 1954 |
グリム(『玉川こども百科』) | 誠文堂新光社 | 1954 |
アンデルセン童話(玉川こども図書館) | 玉川大学出版部 | 1974 |
日本童話(玉川こども図書館) | 玉川大学出版部 | 1974 |
グリム(玉川こども図書館) | 玉川大学出版部 | 1974 |
ドラマと全人教育 | 玉川大学出版部 | 1985 |
子どもの表現活動 | 玉川大学出版部 | 1994 |
書名 | 共著、編集、監修 | 出版社 | 発行年 |
---|---|---|---|
アンデルセン童話選集(小学図書館叢書) | 編集 | 玉川大学出版部 | 1948 |
玉川学校劇集(全10巻) | 編集 | 誠文堂新光社 | 1948-1956 |
岡田陽学校劇選集 小学校故五・六年生用 | 編集 | 玉川大学出版部 | 1955 |
えんげき(『玉川こども百科』) | 編集 | 誠文堂新光社 | 1955 |
あおいとり(『玉川こども百科』) | 共編 | 誠文堂新光社 | 1959 |
ぼくらの学校(『玉川こども百科』) | 編集 | 誠文堂新光社 | 1960 |
偉人物語(『玉川こども百科』) | 編集 | 誠文堂新光社 | 1960 |
サボテンの国旅行記(メキシコ親善旅行記) | 共編 | 玉川大学出版部 | 1961 |
玉川の演劇と舞踊-玉川教育- | 共編 | 玉川大学出版部 | 1964 |
ヨーロッパ公演旅行記 | 編集 | 玉川大学出版部 | 1968 |
新版玉川学校劇集(全8巻) | 共編 | 玉川大学出版部 | 1971-1980 |
南ギリシャを行く | 編集 | 玉川大学出版部 | 1973 |
アンデルセン童話選集(児童図書館叢書) | 編集 | 玉川大学出版部 | 1974 |
玉川中学校劇集(全3巻) | 共編 | 玉川大学出版部 | 1980 |
劇あそび | 共著 | 玉川大学出版部 | 1981 |
みぶりあそび・ごっこあそび | 共著 | 玉川大学出版部 | 1981 |
ことばあそび | 共著 | 玉川大学出版部 | 1982 |
高齢者のためのクリエイティブ・ドラマ (イザベル・B・バーガー著) |
監修 | 同文書院 | 1983 |
玉川学校劇辞典 | 共著 | 玉川大学出版部 | 1984 |
新しい学校劇(全6巻) | 共編 | 玉川大学出版部 | 1985 |
教育の原理 | 共著 | 玉川大学出版部 | 1986 |
みんなで創る英語劇(全3巻) | 共編 | 玉川大学出版部 | 1987 |
日常保育の劇あそび | 共著 | 玉川大学出版部 | 1987 |
音楽リズムの劇あそび | 共著 | 玉川大学出版部 | 1987 |
人形を使った劇あそび | 共著 | 玉川大学出版部 | 1987 |
ものを使った劇あそび | 共著 | 玉川大学出版部 | 1987 |
お誕生日会の劇あそび | 共著 | 玉川大学出版部 | 1987 |
屋外の劇あそび | 共著 | 玉川大学出版部 | 1987 |
子どもの表現と劇遊び | 編集 | フレーベル館 | 1988 |
たのしい劇遊び | 共編 | 日本児童福祉協会 | 1989 |
学校劇選集(全3巻) | 共編 | 玉川大学出版部 | 1993 |
朗読劇台本集(全5巻) | 編集 | 玉川大学出版部 | 1996-2002 |
劇あそび | 監修 | 全国児童館連合会 | 1999 |
表現あそび | 監修 | 全国児童館連合会 | 1999 |
歌あそび | 監修 | 全国児童館連合会 | 1999 |
子どものための朗読劇台本集 | 編集 | 玉川大学出版部 | 2000 |
書名 | 著者 | 単訳・共訳 | 出版社 | 発行年 |
---|---|---|---|---|
子供のための創造教育 | ジェラルディン・B.シックス | 共訳 | 玉川大学出版部 | 1973 |
青い鳥(玉川こども図書館) | モーリス・メーテルリンク | 訳 | 玉川大学出版部 | 1975 |
ドラマによる表現教育 | ブライアン・ウェイ | 共訳 | 玉川大学出版部 | 1977 |
子供のための劇教育 | ジェラルディン・B.シックス | 共訳 | 玉川大学出版部 | 1978 |
朗読劇ハンドブック | メルビン・ホワイト, レスリー・コーガー |
共訳 | 玉川大学出版部 | 1989 |
曲名 | 作曲者 |
---|---|
小さい花 | 柳沢昭 |
さようならみなさま | 柳沢昭 |
大きな大根 | 柳沢昭 |






参考文献
- 岡田陽、岡田純子編『演劇と舞踊―玉川教育―』 玉川大学出版部 1965年
- 岡田陽編補『玉川 学校劇集2』 玉川大学出版部 1949年
- 岡田陽「学校劇指導の実際」(『全人』第16巻第12号 玉川出版部 1946年 に所収)
- 岡田陽「創造劇の意義」(『全人教育』第192号 玉川大学出版部 1965年 に所収)
- 岡田陽「演劇教育の位置」(『全人教育』第321号 玉川大学出版部 1976年 に所収)
- 岡田陽「高齢者とドラマ」(『全人教育』第444号 玉川大学出版部 1985年 に所収)
- 岡田陽「小原國芳先生の芸術教育」(『全人教育』第467号 玉川大学出版部 1987年 に所収)
- 岡田陽「朗読劇の魅力」(『全人教育』第477号 玉川大学出版部 1988年 に所収)
- 小原國芳監修『全人教育』第103号 玉川大学出版部 1948年
- 花輪充・川合沙弥香「岡田陽が探究した芸術教育の意義-豊かな感性の育成を目指した演劇教育に着目して-」(『東京家政大学博物館紀要』 2017年 に所収)
- 玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園五十年史』 玉川学園 1980年
- 玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園50年史(写真編)』 玉川学園 1980年
- 玉川大学教育博物館(学園史担当)編『玉川大学出版部発行図書目録一覧表』 2020年