玉川豆知識 No.203
写真で見る玉川学園㉗ ナナイモ校地および周辺で見られる植物
カナダ西部のブリティッシュ・コロンビア州のバンクーバー島第二の町ナナイモ市郊外にあるナナイモ校地。ホールデン湖の東端を含むなだらかな南斜面の牧草地で、面積は約10万坪(約32万平方メートル)、西に1,500メートル級の山々を臨み、まわりは針葉樹の森といった自然環境に囲まれています。このように校地の周りには、湖、湿原、牧草地、森林が広がり、季節の移り変わりとともに多くの植物が見られます。
1.灌木(かんぼく)
2.高木(こうぼく)
3.コケ類・シダ類
4.草本(そうほん)
関連サイト
参考
南佳典著「玉川の仲間たち/ダグラスファー」(2014年発行の『全人』第780号に所収)で、Douglas-fir(ダグラスファー)のことが次のように紹介されています。
ダグラスファーは玉川学園ナナイモ校地内(カナダ)に多くみられ、筆者が学生の頃にナナイモで最初に目にした樹木の一つであり、とても身近な樹木である。非常に巨大となり、記録では樹齢千年を超し、樹高百メートル以上に達した個体もあるという。
北米先住民は、木材や樹皮を良質な燃料として、また食器や支柱、釣針として用いてきた。現代でもパルプ材や柱材として利用されている。
(略)
ダグラスファーの実生(みしょう)は競争力が低く、やがて他の針葉樹に駆逐されてしまう可能性がある。しかし、そこは自然の妙である。何十年かに一度発生する森林火災が周囲を一掃しても、ダグラスファーの母樹(ぼじゅ)は30センチメートルにもおよぶ分厚い樹皮が高い耐火性をもたらし、焼失することはまずない。明るくなった林床で、実生が旺盛に成長をはじめるのである。
ナナイモ校地では下枝が垂れ下がる独特の樹形を示す個体が見られるWestern Redcedar(ウェスタンレッドシーダー)はブリティッシュコロンビア州の州木でもあります。この樹木のことが、南佳典著「玉川の仲間たち/ウェスタンレッドシーダー」(2019年発行の『全人』第841号に所収)に以下のように記されています。
カナダ西海岸の森を歩いていると、必ずと言って良いほど本種に出会う。その多くは巨木として存在し、千年以上も長生きすると言われている。
(略)
他の樹種にはない存在感で異彩を放つ本種は、何千年も前から北米先住民によってカヌーや家屋、道具などに利用されるのみならず、信仰的な用途としてマスクやトーテンポールの素材となり非常に重要な意味を持つ。また樹皮は衣類やバスケット、根や葉などは薬として利用される万能な樹木である。これは本種が抗菌作用のある物質(thujaplicin)を含んでおり、腐朽や虫害に耐性を持つためである。この特徴は自然界においても有効で、倒木となっても腐朽しにくく、その上で新たな樹木実生が育つ“Nurse log”となる。
Bigleaf Maple(ビッグリーフメイプル)について、高﨑宏寿著「玉川の仲間たち/ビッグリーフメイプル」(2015年発行の『全人』第797号に所収)に次のような記述があります。
カナダ・ナナイモ校地の学生棟からホールデン湖に下っていく歩道の側に、カエデの大木がある。カエデ科の木からは甘みのある樹液が採取されるが、サトウカエデから作るメイプルシロップがよく知られている。
校地のあるカナダ西部ではサトウカエデは自生せず、同じカエデ科のビッグリーフメイプルが分布している。糖分含量はサトウカエデより少ない。
(略)
樹液を採取するのは樹齢が10年から20年の若い木で、冬期の12月から1月が適期だそうである。
校地周辺にもビッグリーフメイプルが多く自生しており、校地内では数本の大木が点在している。その中の1本であるこの湖畔のビッグリーフメイプルの主幹は、残念ながら上部が折れている。樹齢は定かではないが、樹高が約17m、胸高直径1m40cm、胸高周囲が4m40cmの巨樹で、この地を開拓した先人が玉川の校地に残してくれた貴重な宝である。
1月のナナイモ校地は一年で最も静かな時期を迎えます。そのことが、谷本亮著「ナナイモの四季/冬のナナイモ・キャンパス」(1988年発行の『全人教育』第475号に所収)で次のように紹介されています。
ナナイモの一月は、一年の内で最も静かな時期です。校地を囲む自然も深い眠りについたように、その動きを止めています。すっかり葉を落としたメイプル(かえで)やアルダーツリー(はんのき)は、その芽を固く閉ざしたまま、じっと息を潜めるように立ちつくし、ダグラスファー(もみのき)の森も、心なしか寄り添い合っているような感じさえします。
3月、4月のナナイモ校地の様子が、小原廣幸著「学外施設定期便/カナダプログラムがスタート」(2011年発行の『全人』第751号に所収)に次のように記るされています。カナダプログラムに参加の農学部の学生たちが、バスでナナイモ校地に到着したところから書かれています。
三月二三日の夕方、大きなダグラスファーの間の下り坂をバスがゆっくりと下りてきました。
(略)
カナダは寒い北国というイメージをもつ方が多いと思いますが、ナナイモ校地は東京よりもちょっと寒い程度です。四月中旬には校地のサクランボの古木が満開となり、サクラやシャクナゲが咲き始めます。
冬の間の雨のおかげで青々とした牧草地や芝生の間からは、タンポポやデージーが顔をのぞかせます。校地に面しているホールデンレイクでは、黄色い大きな水芭蕉が咲き、ツバメが湖面の虫たちを追って飛び交うようになります。
谷本亮著「ナナイモの四季/B.C州花 ドッグウッド」(1988年発行の『全人教育』第479号に所収)では、ブリティッシュコロンビア州の州花をはじめSkunk Cabbage(スカンクキャベッジ)やScotch Bloom(スコッチブルーム)など5月に咲く花を紹介しています。
五月、いよいよ春の到来です。B.C州の州花であるドッグウッド(アメリカハナミズキ)や、さまざまな野草が次々に開花して、一度に季節を塗り変えてゆきます。
特にこの時期、日本ではおめにかかれない珍しい植物も開花します。例えばスカンクキャベッジは、その茎や葉を傷つけると、異臭がするためこの名が付けられています。おなじサトイモ科のミズバショウとそっくりですが、花(包葉)が白ではなく、鮮やかな黄色をしています。この他にも、スコッチブルームと呼ばれるエニシダや、キンポウゲ科のウマノアシガタの近縁種であるバターカップなどが、黄色の花を咲かせます。そして、ワイルドローズ(ノバラ)はピンクの花を、タイガーリリー(オニユリ)は橙色を、コロンバイン(オダマキの一種)やレッドフラワリングカラント(赤花のスグリ)は真紅を、カーマス(ヒナユリ)は紫色を、オーシャンスプレーは、小さな花が集まった羽毛状の繊細な白を、彩りの中に添えています。このように五月になると、ナナイモでは多くの花々が、周辺を色とりどりに飾ります。
参考文献
- 小原芳明監修『全人』第797号 玉川大学出版部 2015年
- 南佳典「玉川の仲間たち/ダグラスファー」(『全人』第780号 玉川大学出版部 2014年 に所収)
- 南佳典「玉川の仲間たち/ウェスタンレッドシーダー」(『全人』第841号 玉川大学出版部 2019年 に所収)
- 高﨑宏寿「玉川の仲間たち/ビッグリーフメイプル」(『全人』第797号 玉川大学出版部 2015年 に所収)
- 小原廣幸「学外施設定期便⑬/カナダプログラムがスタート」(『全人』第751号 玉川大学出版部 2011年 に所収)
- 谷本亮「ナナイモの四季/冬のナナイモ・キャンパス」(『全人教育』第475号 玉川大学出版部 1988年 に所収)
- 谷本亮「ナナイモの四季/B.C州の花 ドッグウッド」(『全人教育』第479号 玉川大学出版部 1988年 に所収)