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玉川豆知識 No.58

ミツバチのダンスと布団蒸し殺法

1. ミツバチ研究の始まり

玉川大学と玉川学園は、多摩丘陵という恵まれた環境を生かして自然を学びの題材にしてきました。中でも歴史とユニークさを誇るのは、ミツバチの研究です。
戦後の食糧難時、甘味食品への関心は高く、日本各地でミツバチの飼育熱が起きていました。
そのような状況の中、ミツバチの花粉媒介を利用した果樹類の増産に挑戦すべく、1950(昭和25)年、農学部の岡田一次教授によって、玉川のミツバチ研究は始まりました。やがて1979(昭和54)年、国内外の諸研究機関との交流と国際的な貢献を目的に、日本で唯一のミツバチに関する総合研究機関として、ミツバチ科学研究所(現:ミツバチ科学研究センター)を設立しました。以来、ミツバチ科学研究所はアジアの養蜂を牽引し、世界に研究成果を発信し続けてきました。1980(昭和55)年には『ミツバチ科学』という機関誌を創刊し、ミツバチ関係の研究論文や解説、学会報告ならびに紀行文などを掲載しています。

農学部養蜂場。右側が岡田一次教授1964(昭和39)年

2. ミツバチ研究の紹介

ここでは数多くある玉川のミツバチ研究の中から2点を紹介します。

ダンスによる情報伝達(収穫のダンス)
-8の字型に躍り、翅を震わせるダンス言語で、距離や方向などの情報を伝えていく-

中央のミツバチが翅の上下動と同時にお尻を振る

あるミツバチが、蜜をたくさん取れるいい場所を見つけたとします。そのミツバチは巣に帰ると興奮して8の字型にダンスを踊ります。すると周りのハチがそれに興味を示し、情報を得ようとします。情報は、この8の字の中心部分を進む時に発信されます。この時、翅を震わせる羽音が250Hz。ピアノの真ん中の「ド」より1オクターブ低い「ド」の音です。1秒間に250回の振動で、1kmを1秒に置き換えて、情報表現しています。そして、方向を教えるには「太陽コンパス」を使います。巣板上でダンスの8の字の中央線の方向が重力場に対する軸から30度右に傾いていたら、飛び立ったとき、太陽から右30度の角度で、目的地に飛んでいきます。このようにミツバチの8の字ダンスは、巣にいる仲間たちに蜜や花粉などがある場所をしらせる情報伝達手段となっています。

黄色い個体が8の字ダンスを踊り、周りのハチが餌場情報(方角と距離)を受け取る。

ニホンミツバチの「布団蒸し殺法」
-熱い蜂球でスズメバチを蒸し殺すニホンミツバチ- ≪玉川発の世界的発見≫

ニホンミツバチの巣はオオスズメバチにとって格好の餌場です。オオスズメバチはニホンミツバチの巣をみつけると餌場マークフェロモンを出し、周囲の木などにこすりつけ、仲間を集めて攻撃してきます。ニホンミツバチはこれに対する対策を講じるためにフェロモンを察知すると、巣を出たり入ったりしてオオスズメバチをおびき寄せます。そして、1匹のオオスズメバチが巣に入ってくると待ち伏せていた500匹にものぼるニホンミツバチの働き蜂がいっせいに飛びかかり、巨大な球を作ってオオスズメバチを中に閉じ込め、胸の筋肉を震わせ発熱します。この巨大な球を「蜂球(ほうきゅう)」といい、蜂球内の温度を計測してみると、最高で48℃に達します。オオスズメバチは44~46℃で死んでしまいます。ミツバチは50℃近くまで大丈夫なので、僅かな差を利用してオオスズメバチを蒸し殺してしまうのです。これを「布団蒸し殺法(熱殺蜂球)」と名付けました。

  • この習性は本学の小野正人教授が発見。1987年にスイスの国際誌に発表され、フェロモンなどが関与するメカニズムの解明とともに、1995年イギリスの科学誌『ネイチャー』に掲載。その後、大きな反響を呼び、世界各国のメディアで紹介されました。
ニホンミツバチ「布団蒸し殺法(熱殺蜂球)」
サーモグラフィで見た画像 50℃近い熱をつくる

3. 多岐にわたった研究や活動
-ミツバチの研究を通して社会に貢献する-

玉川のミツバチに関する研究や活動は多岐にわたります。例えば、脳科学研究とコラボして、ミツバチの遺伝子・脳の研究を行っています。幼稚園児や小学生を対象に開かれるサマースクールの体験学習において、ミツバチの観察やハチミツの採取などを通して、子供たちに生物に対する親しみを感じてもらう活動なども実施しています。
近年、ミツバチの天敵であるスズメバチは、人に危害を与えることから駆除が行われています。しかし、スズメバチが人に攻撃するのは、人間が自然と生物に関わるバランスを崩したことが起因しています。
玉川のミツバチ研究では、目先の利害だけにとらわれず、生物のネットワークを理解し、さまざまな生物と共存・共生していく感覚を養っていくことが大切なことを発信し、これからも生物の多様性と持続可能な環境を考え、社会に貢献する活動を続けていきます。

参考文献

  • 『玉川こども百科 61巻 みつばち』 玉川大学出版部 1956年
  • 岡田一次著『ミツバチの科学』 玉川大学出版部 1975年
  • 小原芳明監修『全人 ZENJIN』第647号 玉川大学出版部 2002年
  • 小原芳明監修『全人 ZENJIN』第659号 玉川大学出版部 2003年
  • 小原芳明監修『全人 ZENJIN』第670号 玉川大学出版部 2004年
  • 小原芳明監修『全人 ZENJIN』第782号 玉川大学出版部 2014年

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