スズメタケ

子実体裏面。下はルミノメーターで撮影

暗い森の中を彷徨(さまよ)い歩いていると、地面からなにやら怪しげな光が……と、怪談の世界ではよくある話だが、キノコの世界にも昔から光を放つものが知られている。鹿児島県久志にある南さつまキャンパスには、ポンカン畑の脇の倒木にスズメタケという発光キノコが棲息している。
スズメタケは、子実体の大きさが1㎝にも満たない小さなキノコであるが、群生するため比較的見つけやすい。梅雨の時期に路傍の倒木を注意深く探すと新鮮な子実体を見つけることができる。発光の強さは八丈島に棲息するグリーンペペ(ヤコウタケ)にはかなわないが、真っ暗にした部屋の中では幻想的な青白い光を放ち、子実体の輪郭が観察できる。
世界には5、000種を超す発光生物が知られている。ホタルやオワンクラゲなどでは多くの研究がされているが、キノコについては、発光物質や発光現象の生物学的な意義などを含めほとんど解明されていないのである。とはいえ、丸木浜の波音を聞きながら、空には満天の星、地にはスズメタケの発光を楽しめるならば、これ以上ない贅沢ではなかろうか。

(農学部准教授 石﨑孝之)
『全人』2020年5月号(No.849)より

スズメタケ(雀茸)

学名:Dictyopanus gloeocystidiatus
キシメジ科

屋久島・種子島・伊豆諸島などに分布し、枯木に群生する。傘はクリーム色、大きさは 2~7㎜。裏の管孔は放射状に配列し、柄は側生し短く、長さ1~2㎜。暗所で青白く光る

子実体表面。枯木に群生する
純粋分離した菌糸体からも発光が観察された(右)