オニヤンマ

産卵中のメス。浅い水場で飛びながら、
腹部先端で水底を突いて産卵する

玉川の丘には、鬼が潜んでいる……。と言っても、妖怪の鬼や怖い先生のことではなく、正体は昆虫のオニヤンマだ。
本種は日本全国に分布し、樹林と接した小川や用水路などの流水がある環境に生息する。国内に生息するトンボの中では最大で、その力と速さを活かし、時には大型のハチやセミなどを捕獲することもある。私も一度だけ、アブラゼミらしき大きな獲物を咥(くわ)えて飛ぶ姿を発見した際は、我が目を疑った。メスは産卵以外で姿をあまり見せないが、オスはメスを探すために水辺に沿った一定のルートを飛ぶので、巡回地点で待っていると目の前を何度も通り過ぎる。学内では奈良池や農学部農場の水路で見られ、いずれも薄暗い場所なので本物の鬼も出てきそうだ。
勇ましい体格と生態から鬼の名が付いたのかと思いきや、研究者用の図鑑には「黒黄の縞模様が虎皮の褌(ふんどし)を連想させる」とも記されており、由来がややコミカルだ。昨今、鬼が登場する漫画が一世を風靡(ふうび)したが、オニヤンマは滅されること無く、いつまでも子どもたちの憧れであって欲しい。

(農学部技術指導員 横倉 啓)
『全人』2021年6月号(No.861)より

オニヤンマ

学名:Anotogaster sieboldii
オニヤンマ科オニヤンマ属

日本全国に分布し、主な発生時期は6~9月。オス・メスともに複眼は緑色で、体色は黒黄の縞模様。国内最大のトンボで、成虫の体長は11cm前後にもなる。幼虫(ヤゴ)は緩やかな流れのある水底に生息し、自然界での幼虫期間は3~4年とされる

幼虫。体長は最大で5cmほど
休憩中のオス。真夏の日中は休憩する姿もよく見られる