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オツネントンボ

産卵中のメス。雪解け後の湿地によく現れる

人間界では「密」を避ける生活が日常になったが、トンボ界でも敢(あ)えて密を避ける種が存在する。
国内に生息するトンボの多くは卵か幼虫で越冬するが、このオツネントンボは成虫で越冬し、真冬極寒の北海道にまで分布している。道内では7〜8月頃に新成虫が発生し、11月上旬まで活動して栄養を蓄え、冬季の約5カ月間は落ち葉の下や岩の隙間に潜り耐え忍び、雪解けと共に一番に目覚め世代交代する。
成虫で越冬する利点は、春真っ先に食物や産卵場所を独占できることだ。トンボは複数の種が同じ水域を利用するため、特に夏季が短い北海道では同・異種入り乱れての縄張り争いが始終絶えず、小型のトンボにはヤンマ類といった中・大型種の存在が時に脅威となる。一方、競争相手が不在の春先であれば、確実に餌を摂り繁殖にも臨(のぞ)め、次世代の個体は冬に備えて摂食に集中するのみで、水辺に固執する必要がない。正に密を回避(かいひ)した生存戦略と言える。
本稿を執筆したのは厳冬期の1〜2月であったが、雪下で静かに眠るオツネントンボを思い、早くも春が恋しくなった。

(農学部技術指導員 横倉 啓)
『全人』2023年3月号(No.880)より

オツネントンボ(越年蜻蛉)

学名:Sympecma paedisca
アオイトトンボ科オツネントンボ属

北海道から九州北部にかけて分布し、水生植物が繁茂する池沼に生息。体長は40mm前後で、オス・メス共に淡褐色。新成虫が発生するのは6~9月頃。南西諸島や小笠原諸島を除く地域で成虫越冬するトンボは、本種を含め3 種のみ

オス。淡褐色の体は枯れ草や枝に止まると目立たない
同じく成虫越冬するホソミオツネントンボ。小枝などに静止し越冬する

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