チャミノガ
青葉の隙間で揺れるチャミノガ緑が眩しい初夏の咸宜園。青葉の隙間に、小さな数寄屋のような住まいがひっそりと佇んでいる。ミノムシだ。葉や小枝を自ら切り取り、糸で綴り合わせて蓑を作る蛾の幼虫である。チャミノガやオオミノガなど日本には約50種がいる。成長に応じて材料を付け足しながら住まいを整えていく。その姿は手を動かし自ら形づくる玉川の「労作」そのものだ。
平安時代の『枕草子』には「蓑虫、いとあはれなり」とある。古来、風に揺れる静かな存在として人々の目に留まってきた身近な生き物だ。夏の盛り、秋の気配を含んだ頃、欠けた信楽や伊賀の器に青葉とともに生けると面白い。蓑は蚕の繭とは異なり、糸と集めた素材が重なり合った構造をもつ。この蓑を用いた細工物は福を呼ぶものとして親しまれてきた。
今日も玉川の数寄屋は静かに少しずつ形を変えていく。芭蕉は「みの虫の 音を聞きにこよ 草の庵」と詠んだ。蓑虫は音を出して鳴くわけではない。動きを音として捉え、静かな営みや気配に耳を傾ける。グローバルな時代だからこそ、そうした日本の感性を大切にしたい。
(農学部准教授 友常満利)
『全人』2026年6月号(No.916)より
チャミノガ(茶蓑蛾)
学名:Eumeta minuscula
チョウ目ミノガ科チャミノガ属
本州以南に分布し、広葉樹林や庭木など各地で見られる。幼虫は蓑の中で越冬する。成虫は夏に出現し、雌は翅(はね)をもたず蓑の中で一生を過ごす。雄は羽化後に飛翔し、雌を探して交尾する。学名は「小さく整った形」を意味する
欠けた花活けに生け込まれたミノムシ
ミノムシの蓑を使った細工物