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故きを温ねて 69

愉快にやつているということ

機関誌『学園日記』1932年8月号掲載の、小学部の自由研究。「物理實驗」と説明が載る
玉川小學部著『自由研究の實際』(玉川出版部、1947年6月)。表紙には小原國芳の筆で「小原國」(右)、「訂正用」(左)とある。教育博物館所蔵

1947(昭和22)年春、文部省は戦後初の「学習指導要領」を発表した。小学校課程では、4年生以上で週2時間から4時間の自由研究が設けられた。
同年6月、玉川小學部著『自由研究の實際』(玉川出版部)が出版された。文部省発表後の素早い出版は、創立以来行われていた、学習の労作化としての自由研究の蓄積があったからだ。
本書では、自由研究の必要、基礎調査、指導方法、指導の実際について章立てされ、学年の発達段階に応じての指導例が多々示された。前年度末の自由研究組織として文芸、科学、社会科、家庭科、美術、音楽、演劇、外国語、体育の9科があげられた。
科学の自由研究では昆虫、鳥類、ほ乳類、植物、微生物、ラジオ、電気などに分かれ「實驗、實測技術を中心に」取り組ませ「記錄、圖表等は特に工夫」などと教師の指導上の留意点にもふれている。
本文中、魚釣りに熱中するあまりに釣り針を自作した3年生児童の逸話が載る。自分が作った釣り針の出来栄えを疑う父親の目前で釣り針を作ってみせると、父親はわが子の作業に驚き見入った。これを機に、昆虫の擬態の様子を父子一緒に観察するなど学びを広げていったという。 「愉快にやつているということ、愉快に沒頭させたということ、これが實に、自由硏究指導の眼目」と小原國芳は述べる。子どもの多様性を認め、一人ひとりを生かす個性尊重の教育の具現化の一つが自由研究であった。

(文=白柳弘幸 教育博物館)
『全人』2019年7/8月号(No.840)より

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