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故きを温ねて 95

ホントの知育を成就

1930(昭和5)年夏、養蚕労作に取り組む生徒たち。
「マユの重さを量り、村の事務所へ運んで検査を受けて等級をつけて貰ってお金に換えられます」(『玉川塾の教育』)
養蚕は桑の葉が取れる5月~9月に行われる。カイコ1頭がつくる絹糸は1,300m~1,500mにもなる
写真提供:農学部 佐治量哉准教授

小原國芳は玉川学園を創立した理由のひとつに、労作教育を徹底させて、児童生徒たちに「ホントの知育を成就」(『玉川塾の敎育』)させたかったことをあげている。
労作教育は「原理としての労作、教科としての労作、環境美化労作」(「日本統治下台湾における労作教育」)の3要素があると、玉川大学名誉教授の石橋哲成は指摘した。小原は教科の労作の例として、机を作る時は「生きた幾何、生きた計算、植物學、美術、更に……電氣學、磁氣學、機械學」を、「農藝をはじめ、養鶏、養豚、養蠶(ようさん)養蜂……を計畫中(けいかくちゅう)なのは、ホントの動植物や化學地質土壌學」を学ぶためなどと述べた。
開校時、玉川学園のある多摩丘陵は桑畑が多く、農家では養蚕が盛んであった。蚕(かいこ)を飼育するための桑畑は学内に十分にあっただろう。しかし、生徒たちはそれに安住しなかったはずだ。よい蚕糸を生み出すための桑の葉に適切な土壌は何か。蚕の成育に適した、桑の摘み方、きざみ方、食わせ方、時間はどうあるべきかなど、生徒たちが研究するべき問題は多々あった。
生徒たちの理科教科書にはそうしたことは載らない。労作時には教科横断的な知識が必要になる。専門書も求め実験観察を通し試行錯誤を繰り返し、答えを見つけなければならない。生徒たちの取り組みは収益のための労作ではない。小原は言う。「生きたホントの國語が、歷史が、數學が、理科が學ばれる」ためで、「眞知を得るために、お互は勞作をするのです」と。

(文=白柳弘幸 教育博物館)
『全人』2021年12月号(No.866)より

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